札幌障害年金相談センターでお受けしている「障害年金」のご相談の中でも、「発達障害」の方からのご相談がとても多いです。そこで、今までの経験を通して「障害年金」の申請ポイントをまとめてみましたので皆さまの少しでもお役に立てれば幸甚です。また、御相談等あれば札幌障害年金相談センターにお気軽にお問合せ下さい。
発達障害とは
発達障害とは、生まれつきの脳の障害のために言葉の発達が遅い、対人関係をうまく築くことができない、特定分野の勉学が極端に苦手、落ち着きがない、集団生活が苦手、といった症状が現れる精神障害の総称です。
症状の現れ方は発達障害のタイプによって大きく異なり、自閉症スペクトラム障害、注意欠陥・多動性障害(ADHD)、学習障害、などさまざまな障害が含まれます。幼少期または学童期から症状が現れますが“変わり者”“怠け者”という誤った認識がなされ、見過ごされているケースも多いと考えられています。社会人になってから、不注意やミスが多いといった症状が目立つようになり初めて診断が下されるケースも少なくありません。
・「自閉症スペクトラム障害」については、こちらをご覧下さい。
・「注意欠陥・多動性障害(ADHD)」については、こちらをご覧下さい。
・「学習障害」については、こちらをご覧下さい。
・「広汎性発達障害」については、こちらをご覧下さい。
・「アスペルガー症候群」については、こちらをご覧下さい。
発達障害で「障害年金」を受給する為の要件とは
発達障害で障害年金を受給する為には要件があります。その要件は下記(1)~(3)の要件を満たすことです。
障害年金を受給する為の要件
(1)初診日要件
何か周りの人達と違っていると感じて病院で診察を受けた日を「初診日」といいます。
今はインターネットでも発達障害のチェックシートみたいのがあって、その評価が「発達障害の可能性が高い」となったとしても、それは障害年金制度上の「初診日」とはなりませんのでご注意下さい。
まだ医療機関で診察を受けていない方は、診察を受けるところから始めて下さい。
※診察を受けて発達障害と診断されたとしても、過剰診断が最近問題になっておりますので、障害年金の受給とは別に過剰診断であることを踏まえた判断をされた方が良いかもしれません。
(2)保険料納付要件
この保険料納付要件が満たしていないと、障害年金を受給することはできませんので大変重要な要件です。
この「保険料納付要件」を満たしているかどうかを判断する為には、上記(1)初診日がないと判断ができません。ですので、まずは「初診日」を確認をしてから「保険料納付要件」を確認するようにして下さい。
「保険料納付要件」とは、初診日の前日に、その初診日のある月の、前々月までの期間の3分の2以上が、次のいずれかの条件に当てはまっている必要があります。
・保険料を納めた期間(会社員や公務員の配偶者だった期間も含む)
・保険料を免除されていた期間
・学生納付特例又は若年者納付猶予の対象期間
簡単にいうと、初診日までの被保険者であった期間のうち、3分の1を超える期間の保険料が違法に滞納されていなければ大丈夫です。
実際に保険料を納めていた期間だけでなく、正式に保険料が免除されていた期間も、納めていたものとして扱われます。
また、上記の要件を満たしていなくても、令和8年3月31日以前に初診日がある場合は、初診日の前日に、その前々月までの1年間に保険料の違法な滞納がなければ要件を満たすことができます。
なお、20歳前に発達障害の初診日がある場合は、この保険料納付要件を不要となりますのでご安心下さい。
(3)障害認定日要件
障害年金を受けられるかどうかは、上記(1)初診日要件と(2)保険料納付要件を満たす他に、障害認定日に一定以上の発達障害の症状であることが必要です。
・発達障害の場合は、障害認定日とは、初診日から1年6か月が経過した日を言います。
この障害認定日において「一定以上の発達障害の症状」については、日本年金機構から発達障害のおける「障害認定基準」を開示していますので確認をしてみましょう。
障害年金における「発達障害」の障害認定基準(抜粋)
(1)発達障害とは、自閉症 スペクトラム障害 、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものをいう。
(2)発達障害については、たとえ知能指数が高くても社会活動やコミュニケーション能力の障害により対人関係や意思疎通を円滑に行うことができないために日常生活に著しい制限を受けることを着目して認定を行う。また、発達障害とその他認定の対象となる精神疾患が併存しているときは、併合(加重)認定の取扱いは行わず、諸症状を総合的に判断して認定する。
(3)発達障害は、通常低年齢で発症する疾患であるが、知的障害が伴わない者が発達障害の症状により、初めて受診した日が20歳以降であった場合は、当該受診日を初診日とする。
(4)各等級に相当すると認められるものを一部例示すると次のとおりである。
1級 | 発達障害があり、社会性やコミュニケーション能力が欠如しており、かつ、著しく不適応な行動がみられるため、日常生活への適応が困難で常時援助を必要とするもの |
2級 | 発達障害があり、社会性やコミュニケーション能力が乏しく、かつ、不適応な行動がみられるため、日常生活への適応にあたって援助が必要なもの |
3級 | 発達障害があり、社会性やコミュニケーション能力が不十分で、かつ、社会行動に問題がみられるため、労働が著しく制限を受けるもの |
(5)日常生活能力等の判定に当たっては、身体的機能及び精神的機能を考慮のうえ、社会的な適応性の程度によって判断するよう努める
(6)就労支援施設や小規模作業所などに参加する者に限らず、雇用契約により一般就労をしている者であっても、援助や配慮のもとで労働に従事している。したがって、労働に従事していることをもって、直ちに日常生活能力が向上したものと捉えず、現に労働に従事している者については、その療養状況を考慮するとともに、仕事の種類、内容、就労状況、仕事場で受けている援助の内容、他の従業員との意思疎通の状況等を十分確認したうえで日常生活能力を判断すること。引用元:発達障害の障害認定基準
発達障害における日常日常生活能力及び就労の判断について
上記「障害認定基準」の通り、「日常生活への適応にあたって援助が必要なもの」が障害等級2級であり、「日常生活への適応が困難で常時援助を必要とするもの」が障害等級1級に該当します。
ですが、発達障害を抱える方は、「自力で行えない」というよりも、自力でやれても、その行った結果を見ると、普通に求められる程度には達しないことが非常に多く、その後始末に家族や周囲の人がフォローすることになります。その程度に応じて、援助がなければ出来ないのか、時に応じて援助があれば出来るのか等の判断がされます。
発達障害で「障害年金」を申請するポイント
札幌障害年金相談センターに寄せられるご相談の中で「発達障害で仕事をしていると障害年金を受給できませんか」という趣旨のお問合せをお受けすることがあります。まずは申請ポイントを説明する前に「働いている場合の障害年金の受給の有無」について解説します。
働いていると「障害年金」は受給できない?
「障害年金」は働いていても支給される場合があります。但し、発達障害の場合、就労の事実は認定のマイナス評価される傾向にはあると思います。
「障害認定基準」に下記のような記載があります。
『就労支援施設や小規模作業所などに参加する者に限らず、雇用契約により一般就労をしている者であっても、援助や配慮のもとで労働に従事している。したがって、労働に従事していることをもって、直ちに日常生活能力が向上したものと捉えず、現に労働に従事している者については、に、仕事のその療養状況を考慮するととも種類、内容、就労状況、仕事場で受けている援助の内容、他の従業員との意思疎通の状況等を十分確認したうえで日常生活能力を判断すること。 』
障害者雇用枠や一般就労で働いている場合
もし働いていたとしても、働いている状況について、この「障害認定基準」に基づいて、できるだけ詳しく伝えていくことが必要があります。どう伝えるかですが、下記で紹介する「病歴・就労状況等申立書」に具体的に書くようにして下さい。
働いている場合で注意すべき点は、例として医療福祉業界のおける夜間勤務です。最近の人材不足もあって夜間勤務を一人体制でやっている場合があります。この夜間勤務を一人でやっている場合、周りの方達(上司や同僚)からのサポートがない状況と言えます。そのまま手続きを進めてしまうと不支給決定を受けてしまう可能性があるので、十分を気をつけて手続きをするようにして下さい。
発達障害で障害年金を申請する具体的なポイント
「発達障害」で「障害年金」を申請しようとする場合、下記の2つが申請ポイントとなります。
1,診断書の評価
(1)医療機関に作成して貰う診断書は、「障害年金」用の診断書になります。書式はこちら(一番下の方)です。
(2)この診断書は、「障害年金」自体の支給決定の有無のみならず、障害等級の決定に大きな影響があります。
(3)診断書のポイントは、日常生活能力の評価がより正しく評価を受けているかどうかです。
これは「正しく評価をしてくれて当たり前ですよ」と思われがちですが、当センターでお受けしている案件で「主治医の評価」と「ご本人及びご親族の評価」が一致しないことが多いことをお伝えさせて頂きます。
ご親族が同居されている場合は、ご親族の方から日常生活の状況をお伝えして頂く必要があるかもしれません。
2,病歴・就労状況等証明書の作成
(1)診断書は第三者である医療機関が作成しますが、「障害年金」を請求するご本人が、日常生活状況を訴える書類が 「病歴・就労状況等申立書」 です。ですので、この 「病歴・就労状況等申立書」 はご本人(又はご親族等)が作成することになります。
(2)この「病歴・就労状況等申立書」は、発症時から現在に至るまでの病歴などを記載する書類となっています。
(3) 「病歴・就労状況等申立書」 の作成ポイントは、主観的に記載しないことです。
例えば、「~辛かった」ことを表現したい場合、「どう辛かった」のか、それが「発達障害」の症状にどう関係があるのか等を第三者に理解できるように具体的に記載して下さい。
病歴が長い方に関しては、記憶が曖昧になっていることが多いので、ご親族等と確認しながら作成すると良いと思います。
(4)ご自身の行動の特徴を客観的に把握されている方もいらっしゃいますが、そのような方達ばかりではないので、ご親族と同居されていない場合でもご親族等の助力を得て作成されることをお勧め致します。
まとめ
以上が、簡単にですが「発達障害」で「障害年金」を申請するポイントとなります。もしご不明な点等がありましたらご遠慮なくお問合せ下さい。
最後読んで頂きまして大変にありがとうございました。
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少しでも障害年金に該当する可能性があると思いになった方は専門家による障害年金受給診断チェックを申し込まれることをお勧めします。
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