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網膜色素変性症について
1. 網膜色素変性症とは
網膜色素変性症は目の中にあってカメラでいえばフィルムに相当する網膜という膜に異常をきたす遺伝性、進行性の病気です。 『網膜』は光を神経の信号に変える働きをします。そしてこの信号は視神経から脳へ伝達され、私たちは光を感じることができるわけです。 『網膜』には色々な細胞が存在していてそれぞれが大切な働きをしていますが、網膜色素変性症ではこの中の視細胞という細胞が最初に障害されます。 視細胞は目に入ってきた光に最初に反応して光の刺激を神経の刺激、すなわち電気信号に変える働きを担当しています。 視細胞には大きく分けて2つの種類の細胞があります。 ひとつは網膜の中心部以外に多く分布している「杆体細胞」で、この細胞は主に暗いところでの物の見え方や視野の広さなどに関係した働きをしています。 もうひとつは「錐体細胞」でこれは網膜の中心部である黄斑と呼ばれるところに分布して、主に中心の視力や色覚などに関係しています。
網膜色素変性症ではこの二種類の細胞のうち杆体が主に障害されることが多く、このために
(1)暗いところで物が見えにくくなったり(とりめ、夜盲)、
(2)視野が狭くなったりするような症状を最初に起こしてきます。
そして(3)病気の進行とともに視力が低下し てきます。※障害認定基準
ここで視力というのは、網膜の能力を表す矯正視力(眼科でレンズを使用して測定する視力)のことで、裸眼視力の低下は病気の進行や網膜の能力と関係ありません。またひとくちに網膜色素変性症といっても原因となる遺伝子異常は多くの種類がありますし、それぞれの遺伝子異常に対応した網膜色素変性症の型のあるため症状も多彩です。
2. この病気の原因はわかっているのですか
この病気は視細胞や、視細胞に密着している網膜色素上皮細胞に特異的に働いている遺伝子の異常によって起こるとされています。
以前は原因となる遺伝子がわかっているのは網膜色素変性症の患者さん全体の極一部でしかなかったのですが、最近 の研究で日本人に多い遺伝子の変化があきらかになって、解析の精度とスピードもアップしてきています。
現在までにわかっている原因遺伝子としては常染色体 劣性網膜色素変性症ではEYS、杆体cGMP-フォスフォジエステラーゼαおよびβサブユニット、杆体サイクリックヌクレオチド感受性陽イオンチャンネ ル、網膜グアニルシクラーゼ、RPE65、細胞性レチニルアルデヒド結合蛋白質、アレスチンなどの遺伝子が知られており、また常染色体優性網膜色素変性症 ではロドプシン、ペリフェリン・RDS (retinal degeneration slowの略) 、X連鎖性網膜色素変性症では網膜色素変性症GTPase調節因子(RPGR)の各遺伝子が知られています。
今後さらに原因となる遺伝子異常が同定され る見込みです。遺伝子の変化をみてひとりひとりにあったカウンセリングや治療を目標として、効率のよい遺伝子診断法が研究されています。
3.この病気にはどのような治療法がありますか
この病気には現在のところ、網膜の機能をもとの状態にもどしたり確実に進行を止め 確立された治療法はありません。
対症的な方法として、遮光眼鏡(通常のサングラスとは異なるレンズ)の使用、ビタミンAやその仲間の内服、循環改善薬によ る治療、低視力者用に開発された各種補助器具の使用などが行われています。
「遮光眼鏡」は明るいところから急に暗いところに入ったときに感じる暗順応障害に対 して有効であるほか、物のコントラストをより鮮明にしたり、また明るいところで感じる眩しさを軽減させたりします。
「ビタミンA」はアメリカでの研究で網膜色素変性症の進行を遅らせる働きがあることが報告されていますが、すべての網膜色素変性症の患者さんにはあてはまらない可能性があります。通常の量以上に内服して蓄積すると副作用を起こすこともあります。
また、循環改善薬による治療も必ずしも全員に対して有効であるわけではないのですが、使用により視野が少 し広がる、明るくなる患者さんがみられます。
確実な治療法がない現在、最も重要なことは、眼科疾患の中でも進行の遅い疾患ですので、視力視野の良いうちから慌てないこと、矯正視力や視野結果を理解して自分の進行速度を把握すること、進行速度から予測される将来に向けて準備をすること、視機能が低下してきて も各種補助器具を用いて残存する視力視野を有効に使い生活を工夫することです。
補助具のうち拡大読書器などを使えば、かなり視力が低下してからも字を読ん だり書いたりすることが可能です。
コンピューターの音声ソフトによるインターネットやメールも重要です。
将来期待される治療法として、遺伝子治療、網膜移植、人工網膜さらに代替レチノイドなどの研究が行われています。これらの治療法はまだ実際に誰に対しても 行える治療法とはなっていませんが、研究段階ですがその成果は次第に上がってきています。
2007年から、アメリカ合衆国とイギリスで、RPE65遺伝子 の変化でおこる網膜色素変性症の遺伝子治療が試みられています。子供のころから発症する重症な網膜色素変性症ですが、安全性の確認とその効果について検討 されていて、まだ短期間の観察ですが、有効性が期待できそうな報告がされています。
別の研究グループは、やはりRPE65遺伝子やビタミンAを網膜内で利 用に関連する遺伝子の異常でおこる網膜色素変性症をもつ患者さんに「代替レチノイド」を内服してもらう治療研究が行なわれています。現在のところ、重い副 作用もなく今後の治療応用が期待されています。
また、網膜の視細胞をできるだけ長生きさせるように、神経保護因子を目のなかで長く作りつづける細胞をいれ た小さなカプセルを目のなかに埋め込む治療も試みられています。まだ我が国ではこれらの治療は始められていませんが、新しい治療への動きは着実に始まって います。人工網膜については、最近我が国で安全性と効果を確かめる試験が行なわれ、臨床応用へと進む可能性が高くなっています。また、網膜色素上皮細胞の 萎縮に対して再生医療を応用する試みも始まっていて、網膜色素変性にもiPS細胞を用いた治療の可能性がでてきました。
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障害年金は、傷病や障害により労働や生活に支障をきたす方への支援制度で、老齢年金と同じ仕組みで運営されています。遠慮せず申請が推奨されます。また、所得保障には傷病手当金や生活保護、失業保険など複数の制度があり、それぞれ条件や手続きが異なります。特に傷病手当金は迅速な支給が特徴で、障害年金の受給までのつなぎ役となります。ただし、各制度は支給調整が行われ、重複支給は避けられます。申請時の注意点やサポートの必要性も重要です。
障害年金の受給金額は、利用する年金制度と障害等級によって異なります。受給金額を確認するには、自身が利用できる制度と障害等級を把握する必要があります。障害等級は1級が最重度で、日常生活で他人の介助が必要な状態、2級は日常生活が著しく制限される状態、3級は労働に制限がある状態を指します。障害基礎年金は定額です。障害厚生年金は報酬比例で計算され、配偶者加給年金などが加算される場合もあります。申請手続きや認定基準の確認は重要です。
障害年金の請求には、以下の4つの書類が主に必要です。
①診断書: 障害内容に応じた8種類があり、詳細な治療経過や生活状況を記載。申請成功の鍵となるため、主治医と協力して作成します。
②病歴・就労状況等申立書: 発病から現在までの病状や生活状況を具体的に記載する重要書類。診断書との整合性が求められます。
③受診状況等証明書: 初診時の医療機関が診断書作成機関と異なる場合に必要。取得困難な場合は理由書を提出します。
④年金請求書: 基礎年金番号やマイナンバーを用いて提出。申請内容に応じて配偶者情報などを記載します。
これらを整え、慎重に申請を進めましょう。
障害年金は、老齢年金と同じ公的年金制度の一部で、障害を負った場合に支給される権利です。受給には「初診日」の特定、保険料納付要件、認定日以降の障害状態の3条件が必要です。障害年金には基礎年金、厚生年金、共済年金の3種類があり、障害等級や加入制度によって支給額が異なります。申請には診断書や病歴申立書などの書類が必須で、認定基準に基づいた正確な作成が求められます。初診日や請求方法の選択も重要で、専門家の支援が推奨されます。
札幌障害年金相談センターでは、正確な障害年金申請を目指し、診断書と病歴・就労状況等申立書の作成を支援しています。診断書は主治医が作成しますが、短い診察時間や患者の生活状況の不十分な把握が問題となることがあります。一方、申立書では感情的な記述や出来事の羅列が障害認定基準に適合しないことが課題です。これらの問題を解決するため、障害認定基準を理解し、必要に応じて書類内容を主治医と相談しながら適切に修正する努力が重要です。
障害年金は、肢体障害や視覚障害など外見で分かるものだけでなく、多様な傷病が対象です。対象疾患には、白内障や緑内障などの視覚障害、感音性難聴などの聴覚障害、脳卒中や脳梗塞などの脳疾患、統合失調症や発達障害などの精神疾患、心筋梗塞や高血圧症、腎不全や糖尿病性合併症などが含まれます。ただし、症状や傷病名によって対象外となる場合もあります。判断が難しい場合は札幌障害年金相談センターにお気軽にご相談下さい。
障害年金の申請には診断書が必要ですが、実際の症状より軽く記載されることがあり、申請者から不満の声が寄せられます。その原因として、医師が日常生活の実態を把握できない、申請者が正確に伝えられない、または医師が申請者の立場を考慮していないことが挙げられます。この結果、年金額が減額されたり受給できない場合があります。当センターでは、こうした問題を防ぐため、札幌障害年金相談センターは適切な申請を支援しています。
障害年金は、日本の2階建て年金制度に基づき、障害基礎年金、障害厚生年金、障害共済年金の3種類に分かれます。障害基礎年金は全員が対象で、1級と2級の等級があり、国民年金加入者に支給されます。厚生年金加入者は障害厚生年金を受け取る権利があり、1~3級の等級が設定されています。共済組合加入者には障害共済年金が適用され、職域年金部分が追加されるのが特徴です。初診日の時点での年金加入状況により、受給対象や申請先が異なります。
障害年金を受給するには、障害が行政の定める認定基準に適合していることを証明する必要があります。そのため、診断書は最も重要な書類であり、適切な内容が記載されるよう担当医と十分に話し合うことが大切です。特に初診日の特定が困難な場合や過去の初診日で手続きが複雑になるケースでは、専門家に相談することで解決の可能性が高まります。当事務所では診断書のチェックや医師への依頼時のアドバイスを提供しています。
障害年金を受給するには、以下の3つの要件を満たす必要があります。
- 初診日要件: 障害の原因となる病気やケガの初診日が年金加入期間内であること。初診日が特定できない場合は受給が難しくなるため重要です。
- 保険料納付要件: 初診日の前日までの期間で、3分の2以上が保険料納付または免除期間であること。未納が多いと受給資格を失うため、学生時代の免除申請が推奨されます。
- 障害認定日要件: 初診日から1年6か月後または症状が固定した時点で一定の障害状態であることが必要。遅れた請求でも最大5年遡及可能です。
障害年金の受給可否は、申請書が提出されると行政が「加入要件」「保険料納付要件」「障害状態要件」を確認することで判断されます。年金事務所や市区町村がまず資格を審査し、その後、日本年金機構の障害年金センターで認定医が障害等級を基準に審査します。審査は書類内容を基に客観的に行われ、3か月程度かかるのが一般的です。支給が決定すると通知が届き、住所や振込先変更時は手続きが必要です。初回支払日は決定日によって異なります。
障害年金の請求手続きは、以下の流れで進められます。まず、電話やメールで相談予約を行い、面談で病気や生活状況を詳しくヒアリングします。その後、初診日や保険料納付要件を確認し、診断書や病歴・就労状況等申立書など必要書類を作成。診断書の記載内容は医師と確認し、必要に応じて修正依頼を行います。完成した書類を年金事務所に提出し、審査には約3か月かかります。支給決定後、初回振込は40~50日後に行われます。
障害年金請求では、初診日時点の年金加入状況が重要です。初診日に年金未加入の場合、請求はできません。また、加入していた年金制度により受給できる年金の種類が異なり、国民年金加入者は障害基礎年金(1級または2級対象)、厚生年金加入者は障害厚生年金(1~3級対象)を受給可能です。障害認定日請求では最大5年遡及可能ですが、事後重症請求では請求日以降の受給のみです。適切な手続きが受給額に影響するため、専門家への相談が推奨されます。
特別障害者手当は、20歳以上で重度の障害があり、日常生活に特別な介護が必要な在宅障害者に支給される手当で、月額26,260円(平成25年時点)です。施設入所や長期入院がなく、所得基準を満たすことが条件です。対象者は複数の重い障害を持つ人や、日常生活に大きな支障がある人が含まれます。申請には、障害者手帳の所持が必須で、書類を市区町村役場に提出します。受給後も現況届や診断書の再提出が必要です。