慢性血栓塞栓性肺高血圧症について

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1. 概要

慢性血栓塞栓性肺高血圧症は、器質化した血栓により肺動脈が慢性的に閉塞を起こし、肺高血圧症を合併し、労作時の息切れなどを認めるものである。肺換気、 血流スキャンで、換気に異常を認めず、区域性欠損を呈すること、造影CTまたは肺動脈造影で、血栓が器質化している所見(内科治療では溶解しない)を認め ること、加えて、右心カテーテルで、肺動脈平均圧≧25 mmHg、肺動脈楔入圧は正常(左心系の異常はない)であること、他の肺高血圧疾患を除外すること、から診断される。肺高血圧の程度が重症な例では内科的 治療には限界があり、予後不良とされてきたが、手術(肺血栓内膜摘除術)によりQOLや生命予後の改善が得られる症例が存在するため、その正確な診断と手 術適応を考慮した重症度評価が重要である。

2. 原因の解明

急性肺血栓塞栓症の3%程度が慢性血栓塞栓性肺高血圧症になると報告されているが、 急性の既往のないものが半数以上にみられる。凝固異常、線溶系異常との関連の報告もあるが稀である。血管閉塞の程度が、肺高血圧症成立の要因として重要で あるが、肺血管の閉塞率と肺血管抵抗の相関は良いとは言えず、血栓反復、肺動脈内での血栓の進展、さらに肺血管リモデリング の関与が示唆されている。またわが国では、女性に多く、深部静脈血栓症の頻度が低いHLA-B*5201やHLA-DPB1*0202と関連する病型がみ られことが報告されている。これらのHLAは急性例とは相関せず、欧米では極めて頻度の少ないタイプのため、欧米例と異なった発症機序を持つ症例の存在が 示唆されている。

3. 主な症状

自覚症状として本症に特異的なものはないが、労作時の息切れは最も高頻度に見られ、この他、易疲労感、胸痛、乾性咳嗽、失神なども見られる。血栓を反復す るタイプの場合、突然の呼吸困難や胸痛といった症状を反復して認める。一方、徐々に労作時の息切れのみが増強してくるタイプもある。頻脈や過呼吸、肺高血 圧症を示唆する聴診所見の異常(Ⅱ音肺動脈成分の亢進、肺動脈弁弁口部の拡張期心雑音、三尖弁弁口部の収縮期心雑音)、まれに血管狭窄による肺野の血管性 雑音を認める。低酸素血症の進行に伴い、チアノーゼ、右心不全症状を来たすと、腹部膨満感や体重増加、下腿浮腫、肝腫大、などがみられる。下肢の深部静脈 血栓症を合併する症例では、下肢の腫脹や疼痛が認められる。

 

4. 主な治療法

原則として血栓再発予防と二次血栓形成予防のための抗凝固療法が選択される。WHO 機能分類2度以上では、付着血栓の近位端が主肺動脈から区域動脈近位部にあり、手術的に摘除可能な患者では、肺血栓内膜摘除術が推奨される。中枢血栓に相 応しない著明な肺血管抵抗高値を示す例や、区域や亜区域動脈に限局する血栓症例は、手術適応外となり、肺血管拡張薬が使用されるが、その意義は定まってお らず、臨床試験への参加が推奨される。低酸素血症に対する在宅酸素療法、右心不全に対する利尿薬、血栓再発例では、下大静脈フィルターの挿入が行われる。 また、日本では、バルーンによるカテーテル治療が行われはじめている。

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 障害年金は、傷病や障害により労働や生活に支障をきたす方への支援制度で、老齢年金と同じ仕組みで運営されています。遠慮せず申請が推奨されます。また、所得保障には傷病手当金や生活保護、失業保険など複数の制度があり、それぞれ条件や手続きが異なります。特に傷病手当金は迅速な支給が特徴で、障害年金の受給までのつなぎ役となります。ただし、各制度は支給調整が行われ、重複支給は避けられます。申請時の注意点やサポートの必要性も重要です。

 障害年金の受給金額は、利用する年金制度と障害等級によって異なります。受給金額を確認するには、自身が利用できる制度と障害等級を把握する必要があります。障害等級は1級が最重度で、日常生活で他人の介助が必要な状態、2級は日常生活が著しく制限される状態、3級は労働に制限がある状態を指します。障害基礎年金は定額です。障害厚生年金は報酬比例で計算され、配偶者加給年金などが加算される場合もあります。申請手続きや認定基準の確認は重要です。

障害年金の請求には、以下の4つの書類が主に必要です。

診断書: 障害内容に応じた8種類があり、詳細な治療経過や生活状況を記載。申請成功の鍵となるため、主治医と協力して作成します。

病歴・就労状況等申立書: 発病から現在までの病状や生活状況を具体的に記載する重要書類。診断書との整合性が求められます。

③受診状況等証明書: 初診時の医療機関が診断書作成機関と異なる場合に必要。取得困難な場合は理由書を提出します。

年金請求書: 基礎年金番号やマイナンバーを用いて提出。申請内容に応じて配偶者情報などを記載します。

これらを整え、慎重に申請を進めましょう。

 障害年金は、老齢年金と同じ公的年金制度の一部で、障害を負った場合に支給される権利です。受給には「初診日」の特定、保険料納付要件、認定日以降の障害状態の3条件が必要です。障害年金には基礎年金、厚生年金、共済年金の3種類があり、障害等級や加入制度によって支給額が異なります。申請には診断書や病歴申立書などの書類が必須で、認定基準に基づいた正確な作成が求められます。初診日や請求方法の選択も重要で、専門家の支援が推奨されます。

 札幌障害年金相談センターでは、正確な障害年金申請を目指し、診断書と病歴・就労状況等申立書の作成を支援しています。診断書は主治医が作成しますが、短い診察時間や患者の生活状況の不十分な把握が問題となることがあります。一方、申立書では感情的な記述や出来事の羅列が障害認定基準に適合しないことが課題です。これらの問題を解決するため、障害認定基準を理解し、必要に応じて書類内容を主治医と相談しながら適切に修正する努力が重要です。

 障害年金は、肢体障害や視覚障害など外見で分かるものだけでなく、多様な傷病が対象です。対象疾患には、白内障や緑内障などの視覚障害、感音性難聴などの聴覚障害、脳卒中や脳梗塞などの脳疾患、統合失調症や発達障害などの精神疾患、心筋梗塞や高血圧症、腎不全や糖尿病性合併症などが含まれます。ただし、症状や傷病名によって対象外となる場合もあります。判断が難しい場合は札幌障害年金相談センターにお気軽にご相談下さい。

 障害年金の申請には診断書が必要ですが、実際の症状より軽く記載されることがあり、申請者から不満の声が寄せられます。その原因として、医師が日常生活の実態を把握できない、申請者が正確に伝えられない、または医師が申請者の立場を考慮していないことが挙げられます。この結果、年金額が減額されたり受給できない場合があります。当センターでは、こうした問題を防ぐため、札幌障害年金相談センターは適切な申請を支援しています。

 障害年金は、日本の2階建て年金制度に基づき、障害基礎年金、障害厚生年金、障害共済年金の3種類に分かれます。障害基礎年金は全員が対象で、1級と2級の等級があり、国民年金加入者に支給されます。厚生年金加入者は障害厚生年金を受け取る権利があり、1~3級の等級が設定されています。共済組合加入者には障害共済年金が適用され、職域年金部分が追加されるのが特徴です。初診日の時点での年金加入状況により、受給対象や申請先が異なります。

 障害年金を受給するには、障害が行政の定める認定基準に適合していることを証明する必要があります。そのため、診断書は最も重要な書類であり、適切な内容が記載されるよう担当医と十分に話し合うことが大切です。特に初診日の特定が困難な場合や過去の初診日で手続きが複雑になるケースでは、専門家に相談することで解決の可能性が高まります。当事務所では診断書のチェックや医師への依頼時のアドバイスを提供しています。

 障害年金を受給するには、以下の3つの要件を満たす必要があります。

  1. 初診日要件: 障害の原因となる病気やケガの初診日が年金加入期間内であること。初診日が特定できない場合は受給が難しくなるため重要です。
  2. 保険料納付要件: 初診日の前日までの期間で、3分の2以上が保険料納付または免除期間であること。未納が多いと受給資格を失うため、学生時代の免除申請が推奨されます。
  3. 障害認定日要件: 初診日から1年6か月後または症状が固定した時点で一定の障害状態であることが必要。遅れた請求でも最大5年遡及可能です。

 障害年金の受給可否は、申請書が提出されると行政が「加入要件」「保険料納付要件」「障害状態要件」を確認することで判断されます。年金事務所や市区町村がまず資格を審査し、その後、日本年金機構の障害年金センターで認定医が障害等級を基準に審査します。審査は書類内容を基に客観的に行われ、3か月程度かかるのが一般的です。支給が決定すると通知が届き、住所や振込先変更時は手続きが必要です。初回支払日は決定日によって異なります。

 障害年金の請求手続きは、以下の流れで進められます。まず、電話やメールで相談予約を行い、面談で病気や生活状況を詳しくヒアリングします。その後、初診日や保険料納付要件を確認し、診断書や病歴・就労状況等申立書など必要書類を作成。診断書の記載内容は医師と確認し、必要に応じて修正依頼を行います。完成した書類を年金事務所に提出し、審査には約3か月かかります。支給決定後、初回振込は40~50日後に行われます。

 障害年金請求では、初診日時点の年金加入状況が重要です。初診日に年金未加入の場合、請求はできません。また、加入していた年金制度により受給できる年金の種類が異なり、国民年金加入者は障害基礎年金(1級または2級対象)、厚生年金加入者は障害厚生年金(1~3級対象)を受給可能です。障害認定日請求では最大5年遡及可能ですが、事後重症請求では請求日以降の受給のみです。適切な手続きが受給額に影響するため、専門家への相談が推奨されます。

 特別障害者手当は、20歳以上で重度の障害があり、日常生活に特別な介護が必要な在宅障害者に支給される手当で、月額26,260円(平成25年時点)です。施設入所や長期入院がなく、所得基準を満たすことが条件です。対象者は複数の重い障害を持つ人や、日常生活に大きな支障がある人が含まれます。申請には、障害者手帳の所持が必須で、書類を市区町村役場に提出します。受給後も現況届や診断書の再提出が必要です。