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潰瘍性大腸炎で障害年金を申請する際のポイントについて

潰瘍性大腸炎について
1. 潰瘍性大腸炎とは
「潰瘍性大腸炎」は、大腸の粘膜(最も内側の層)にびらんや潰瘍ができる大腸の炎症性疾患のことです。
1,症状の特徴は、下血(げっけつ:肛門から血が出ることの総称)を伴うまたは伴わない下痢とよく起こる腹痛です。
2,病変(異常な細胞や組織を説明する言葉。病変は一般的な説明であって、診断ではない)は、直腸から連続的に、そして上行性(口側)に広がる性質があり、最大で直腸から結腸(盲腸からS状結腸まで)全体に拡がる。
3,「潰瘍性大腸炎」は、病変の拡がり、経過などで下記のように分類される。
2. この病気の原因はわかっているのですか
原因は明らかになっていません。これまでに腸内細菌の関与や本来は外敵から身を守る免疫機構が正常に機能しない自己免疫反応の異常、あるいは食生活の変化の関与などが考えられていますが、まだ原因は不明です。
3. この病気ではどのような症状がおきますか
1)初期症状として、便がだんだんゆるくなる。
2)そして、便は出血を伴い、痙攣性の腹痛と排便(下痢)の頻度が増え症状が悪化します。
※下痢は徐々にあるいは全く突然に始まることもある。
3)更に、症状が重くなると、発熱、体重減少、貧血などがあらわれるようになります。
★腸管の合併症としては、中毒性巨大結腸症、大腸穿孔、大腸狭窄がある。
★腸管以外の合併症として皮膚病変(壊疽性膿皮症や結節性紅斑など)、眼病変(虹彩炎、ぶどう膜炎、虹彩毛様体炎など)や関節炎、子供の場合だと成長障害が起こることもあります。

潰瘍性大腸炎の症状の程度について
<重症度分類> 中等症以上を対象とする。 潰瘍性大腸炎の臨床的重症度による分類 【劇症】重症の中でも特に症状が激しく重篤なものをいう。発症の経過により急性電撃型と再燃劇症型に分けられる。劇症の診断基準は以下の5項目すべてを満たすもの (1)重症基準を満たしている。 (2)15回/日以上の血性下痢が続いている。 (3)38.5℃以上の持続する高熱である。 (4)10,000/mm3以上の白血球増多がある。 (5)強い腹痛がある。 【重症】①及び②の他に、全身症状である③又は④のいずれかを満たし、かつ6項目のうち4項目を満たすもの ①排便回数:6回/日以上 ②顕血便 :(+++) ③発 熱:37.5度以上 ④頻 脈:90/分以上 ⑤貧 血:Hb(ヘモグロビン)10.0g/dL(グラム毎デシリットル)以下 ←『血液中のヘモグロビン濃度』 ⑥赤沈(せっちん赤血球沈降速度)またはCRP:30mm/h以上 3.0mg/dL以上 ←『血液中の炎症の程度』又は『体内の炎症の程度』 【中等症】 重症と軽症の中間=下記の①~⑥のいずれかを満たし、重症の基準を満たさないもの ①排便回数:5回/日以上 ②顕血便:(++)~(+++) ③発熱:37.5℃以上 ④頻脈:90/分以上 ⑤貧血:Hb10.0g/dL以下 ⑥赤沈:30mm/h以上またはCRP3.0mg/dL以上 【軽症】下記の6項目を全て満たすもの ①排便回数:4回/日以上 ②顕血便 :(+)~(-) ③発 熱:37.5度以上の発熱がない ④頻 脈:90/分以上 の頻脈なし ⑤貧 血:Hb10.0g/dL以下 の貧血なし ⑥赤沈またはCRP:正常 ※<顕血便の判定 > (-)血便なし (+)排便の半数以下でわずかに血液が付着 (++)ほとんどの排便時に明らかな血液の混入 (+++)大部分が血液 ※診断基準及び重症度分類の適応における留意事項 1.病名診断に用いる臨床症状、検査所見等に関して、診断基準上に特段の規定がない場合には、いずれの時期のものを用いても差し支えない(ただし、当該疾病の経過を示す臨床症状等であって、確認可能なものに限る。)。 2.治療開始後における重症度分類については、適切な医学的管理の下で治療が行われている状態であって、直近6か月間で最も悪い状態を医師が判断することとする。 3.なお、症状の程度が上記の重症度分類等で一定以上に該当しない者であるが、高額な医療を継続することが必要なものについては、医療費助成の対象とする。
潰瘍性大腸炎(指定難病97)
※【参考資料】世界保健機関(WHO)の基準では、成人の貧血は以下のように定義しています。 男性:Hb 13.0g/dL未満 / 女性:Hb 12.0g/dL未満
「潰瘍性大腸炎」で「障害年金」受給する為の要件とは
「潰瘍性大腸炎」で障害年金受給の要件は、下記(1)~(3)の要件を満たす必要があります。
「潰瘍性大腸践」で障害年金受給する為の要件
(1)初診日要件
下痢をよくするようになり、また腹痛も伴うなどの症状で、初めて病院で診察を受けた日を「初診日」といいます。
※よく誤解をされている方がいらっしゃるのでくどい説明になりますが、あくまでも「初めて診察を受けた日」であって、「潰瘍性大腸炎」と診断された日ではありませんのでご注意下さい。
「潰瘍性大腸炎」の場合、下痢や腹痛の症状があらわれた後5年以上医療機関に通院していないケースは稀かと思いますが、この「初診日」を何年何月何日と証明することが障害年金受給にはとても重要な要件になっています。
(2)保険料納付要件
2つ目の要件は、保険料納付要件を満たしていることです。この保険料納付要件が満たしていないと、障害年金を受給することはできませんので、この保険料納付要件も重要な要件です。
この「保険料納付要件」を満たしているかどうかを判断する為には、上記(1)初診日がはっきりしないと判断ができません。ですので、まずは「初診日」を確認をしてから「保険料納付要件」を確認するようにして下さい。
「保険料納付要件」とは、初診日の前日に、その初診日のある月の、前々月までの期間の3分の2以上が、次のいずれかの条件に当てはまっている必要があります。
・保険料を納めた期間(会社員や公務員の配偶者だった期間も含む)
・保険料を免除されていた期間
・学生納付特例又は若年者納付猶予の対象期間
簡単にいうと、初診日までの被保険者であった期間のうち、3分の1を超える期間の保険料が違法に滞納されていなければ大丈夫です。
実際に保険料を納めていた期間だけでなく、正式に保険料が免除されていた期間も、納めていたものとして扱われます。
また、上記の要件を満たしていなくても、令和8年3月31日以前に初診日がある場合は、初診日の前日に、その前々月までの1年間に保険料の違法な滞納がなければ要件を満たすことができます。
なお、20歳前に発達障害の初診日がある場合は、この保険料納付要件を不要となりますのでご安心下さい。
(3)障害認定日要件
障害年金受給できるかどうかは、上記(1)初診日要件と(2)保険料納付要件を満たす他に、障害認定日に一定以上の発達障害の症状であることが必要です。
・発達障害の場合は、障害認定日とは、初診日から1年6か月が経過した日を言います。
この障害認定日において「一定以上の発達障害の症状」については、日本年金機構から発達障害のおける「障害認定基準」を開示していますので確認をしてみましょう。
1,肛門・直腸・泌尿器の障害認定基準
障害年金認定基準では、肛門・直腸・泌尿器(尿を作り、体外に排出する為の器官)の障害について次のように認定します。
1級 | 肛門、直腸・泌尿器で1級に該当する明確な基準はない(全身状態、術後の経過及び予後、原疾患の性質、進行状況等により総合的に判断し、さらに上位等級に認定する) |
2級 | 人工肛門を造設し、かつ新膀胱または尿路変更術を施したもの ・人工肛門を造設し、かつ完全排尿障害状態にあるもの。(完全排尿障害状態とは、カテーテル留置または自己導尿の常時施行を必要とする状態をいう) |
3級 | 人工肛門を造設したもの ・新膀胱を造設したもの、または尿路変更術を施したもの |
2,難病の障害認定基準
「潰瘍性大腸炎」は難病である為、次の障害認定基準に即して判断されます。
『難病については、その発病の時期が不定、不詳であり、かつ、発病は緩徐であり、ほとんどの疾患は、臨床症状が複雑多岐にわたっているため、その認定に当たっては、客観的所見に基づいた日常生活能力等の程度を十分考慮して総合的に認定するものとする。
なお、厚生労働省研究班や関係学会で定めた診断基準、治療基準があり、それに該するものは、病状の経過、治療効果等を参考とし、認定時の具体的な日常生活状況等を把握して、総合的に認定する。』
更に『障害の程度は、一般状態が次表の
一般状態区分表のオに該当するものは1級に、
同表のエ又はウに該当するものは2級に、
同表のウ又はイに該当するものは3級に
おおむね相当するので、認定に当たっては、参考とする。』となっています。
一般状態区分表
ア | 無症状で社会活動ができ、制限を受けることなく、発病前と同等にふるまえるもの |
イ | 軽度の症状があり、肉体労働は制限を受けるが、歩行、軽労働や座業はできるもの 例えば、軽い家事、事務など |
ウ | 歩行や身のまわりのことはできるが、時に少し介助が必要なこともあり、軽労働はできないが、日中の50%以上は起居しているもの |
エ | 身のまわりのある程度のことはできるが、しばしば介助が必要で、日中の50%以上は就床しており、自力では屋外への外出等がほぼ不可能となったもの |
オ | 身のまわりのこともできず、常に介助を必要とし、終日就床を強いられ、活動の範囲がおおむねベッド周辺に限られるもの |
潰瘍性大腸炎で障害年金を申請する際のポイント
上記の「潰瘍性大腸践」で障害年金受給する為の要件 をご覧になって頂くとお解かりの通り、「初診日要件」「保険料納付要件」は機械的に判断されるものですが、「認定日要件」である障害認定基準に該当しているかどうかは、「潰瘍性大腸炎」の症状をどうお伝えするかで結果が変わってきます。
その為、次のことがポイントになります。
(1)普段の診察時に主治医への潰瘍性大腸炎の症状をしっかりお伝えすること
普段の日常生活状況を主治医に伝えていることが必要です。いざ診断書作成の段で日頃お伝えしていない症状を伝えると主治医に不信感を抱かせてしまいかねませんので肝に銘じて頂ければと思います。
(2)病歴・就労状況等申立書を客観的に詳細に作成すること
また、主治医が作成する診断書のみならず、ご自分で作成する「病歴・就労状況等申立書」についてもできるだけ詳しく取りまとめて下さい。作成上のポイントは主観では客観的に症状を伝えることです。
「辛い」「苦しい」の表現だけでは、どう辛いのか、苦しいのか全く分かりません。
読んだ人が具体的にイメージができるように記載するようにして下さい。
付録1:診断書


付録2:病歴・就労状況等申立書


★合併症が発症されている場合は、どのような合併症が発症しているかも立分けながら記載する良いでしょう。
以上が、潰瘍性大腸炎で障害年金申請する際のポイントです。
いかがだったでしょうか。
ご不明な点がありましたらご遠慮なくご相談やお問合せをして下さい。
潰瘍性大腸炎で障害年金申請についてのご相談・お問合せは
★ 障害年金受給診断は無料で行なっております。
少しでも障害年金に該当する可能性があると思いになった方は専門家による障害年金受給診断チェックを申し込まれることをお勧めします。
★「電話:080-3268-4215 / ℡:011ー748-9885」 又は 「こちらのフォーム(メール)」でお申込み下さい。
社会保険労務士法人ファウンダー / 札幌障害年金相談センター
受付時間 平日 9:00-20:00(土日祝も対応可)
所在地〒007-0849 北海道札幌市東区北49条東13丁目1番10号
潰瘍性大腸炎による障害者手帳の障害認定基準
障害者手帳の障害認定基準は、どちらかというと「排便機能障害」の程度をみているようです。障害者年金は「潰瘍性大腸炎」が就労を含めた日常生活にどのように影響を与えるかを考慮している点が異なる視点のようです。
付録3:障害者手帳の障害認定基準

