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家族性地中海熱について
概要
家族性地中海熱とは、40℃近い高熱を伴う腹膜炎や胸膜炎などを繰り返し発症する病気です。血液中の好中球に存在するパイリンと呼ばれるたんぱく質に異常が生じ、炎症を引き起こすシステムが乱れることによって過剰な炎症反応が引き起こされると考えられています。このパイリンの異常は遺伝子の変異によって引き起こされるケースが多く、遺伝が関与していることが分かっています。一方で、遺伝子の変異が見られない発症者も少なくないことから、遺伝以外の要因も関与していることが示唆されています。
家族性地中海熱はまれな病気であり、日本では約300人の患者が確認されています。発作のように高熱や腹膜炎などの重篤な症状を引き起こしますが、比較的速やかに回復し、再発を繰り返すのがこの病気の特徴でもあります。発作が治まれば症状は消失するため、この病気で命を落とすケースはまれですが、適切な治療を行わなければアミロイドと呼ばれる異常なたんぱく質が全身のさまざまな臓器に沈着してダメージを与える“アミロイドーシス”を合併することが報告されています。
原因
家族性地中海熱は、好中球に存在するパイリンと呼ばれるたんぱく質に異常が生じることによって引き起こされる病気です。パイリンは、炎症を引き起こす経路にはたらきかけて炎症を抑えるため、異常が生じると炎症反応が過剰になり、感染症などの原因がないにもかかわらず高熱や腹膜炎などを繰り返すようになります。
パイリンの異常は、“MEFV遺伝子”と呼ばれる遺伝子の変異によって引き起こされると考えられています。この遺伝子の変異は特定の人種や集団に多いことが分かっており、特に地中海沿岸部に居住する人種に多いことから“地中海熱”という名称がついています。
遺伝子の変異は遺伝しやすいことが知られていますが、一方で家族性地中海熱の発症者の中にはMEFV遺伝子の変異が見られないケースもあり、MEFV遺伝子以外の何らかの要因が発症に関与していることが示唆されています。
症状
アミロイドーシスになると、アミロイドが沈着した臓器に関連した障害が現れます。たとえば、脳に沈着する場合には、認知機能に障害をもたらすことがあり「アルツハイマー病」を発症することがあります。また、脳卒中になる可能性もあります。
心臓にアミロイドが沈着すると、心臓のポンプ機能や電気活動が障害を受け、心不全や不整脈を生じることになります。心不全の徴候として、動悸や呼吸困難、息切れなどの症状が現れます。さらに進行すると、横になったときに呼吸が苦しくなるため、常時座らざるを得なくなる起座呼吸になることもあります。不整脈では、房室ブロックや洞不全症候群、心房細動といった重篤な不整脈を生じます。
また、腎臓にアミロイドが沈着すると、タンパク尿や腎不全が生じます。その他、手のしびれを引き起こすや、ベロが大きくなる巨舌、難治性の下痢、肝腫大、しゃがれ声などといった症状が現れることがあります。これらは、いずれもアミロイドの沈着に応じた各種臓器に関連した症状です。
引用元:家族性地中海熱
家族性地中海熱の障害年金の申請ポイント
「家族性地中海熱」は、難病に指定をされています。
家族性地中海熱 の障害認定基準は
障害年金における難病に関する障害認定基準は、次のようになっています。
『いわゆる難病については、その発病の時期が不定、不詳であり、かつ、発病は緩徐(かんじょ)であり、ほとんどの疾患は、臨床症状が複雑多岐にわたっているため、その認定に当たっては、客観的所見に基づいた日常生活能力等の程度を十分考慮して総合的に認定するものとする。
なお、厚生労働省研究班や関係学会で定めた診断基準、治療基準があり、それに該当するものは、病状の経過、治療効果等を参考とし、認定時の具体的な日常生活状況等を把握して、総合的に認定する。』
なお書きにあるように「家族性地中海熱」には診断基準等があるので確認をしてみます。
家族性地中海熱 の診断基準は
「家族性地中海熱」 の診断基準は、下記の通りです。
「家族性地中海熱」は、「典型例」と「非典型例(不完全型)」に分類されます。
ここで診断基準は、「臨床的家族性地中海(FMF)典型例」又は「遺伝子解析によるFMF診断例」を対象とし、FMF「非典型例」は対象としていません。
診断方法
家族性地球解熱(FMF)の診断方法は次の通りです。
1.臨床所見(必須項目)
(1)12時間から72時間続く38度以上の発熱を3回以上繰り返す。発熱時には、CRPや血清アミロイドA(SAA)などの炎症検査所見の著明(非常にあきらか)な上昇を認められ、発作間歇(かんけつ)期にはこれらが消失する。
2.臨床所見 ( 補助項目①)
(1)発熱時の随伴症状として、以下のいずれかが認められる。
① 非限局性(狭い範囲内に限定されない)の腹膜炎(お腹の臓器を覆う腹膜が炎症する病気)による腹痛
尚、腹膜炎に伴う症状は、下記のような症状があります。腹痛(持続性の激痛)
・吐き気・嘔吐を伴う下痢
・発熱
・速い脈拍(頻脈)
・速く浅い呼吸
・腹部がこわばる
※ 因みに、腹部全体が炎症するのが「汎発性腹膜炎」というそうです。
② 胸膜炎(肺を覆う胸膜に炎症が生じる病気)による胸背部痛(きょうはいぶつう)
③ 心膜炎(心臓を覆う心膜が炎症する病気)
心膜炎の症状としては、発熱、胸痛(きょうつう)、呼吸困難、倦怠感等がある。胸痛は深呼吸や咳嗽(がいそう:咳のこと)、体動で強くなる。早く浅い呼吸になりがち。
④ 関節炎
⑤ 精巣漿(せいそうしょうまく。「精巣と精巣上体を被う鞘膜(精巣鞘膜)のこと。精巣漿膜は、肺、心臓、胃腸・肝臓などの腹部の臓器を包んでいる胸膜、心膜、腹膜と同様にサランラップのような薄い膜のこと)膜炎
⑥ 髄膜炎による頭痛
3.臨床所見 ( 補助項目②)
「コルヒチンの予防内服」によって発作が消失あるいは軽減する。
4.MEFV遺伝子解析
1) 臨床所見で必須項目と、補助項目のいずれか1項目以上を認める場合に、臨床的にFMF典型例と診断する。
2) 繰り返す発熱のみ、あるいは補助項目のどれか1項目以上を有するなど、非典型的症状を示す症例については、MEFV遺伝子の解析を行い、以下の場合にFMFあるいはFMF非典型例と診断する。
a) Exon10の変異(M694I、M680I、M694V、V726A)(ヘテロの変異を含む)を認めた場合には、FMFと診断する。
b) Exon10以外の変異(E84K、E148Q、L110P-E148Q、P369S-R408Q、R202Q、G304R、S503C)(ヘテロの変異を含む)を認め、コルヒチンの診断的投与で反応があった場合には、FMF非典型例とする。
c) 変異がないが、コルヒチンの診断的投与で反応があった場合には、FMF非典型例とする。
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