皆さんは、そもそも「アルコール中毒」や「アルコール依存症」で障害年金を受給できると思いますか。
お酒好きの私も興味津々です。早速本編を見ていきましょう。
Contents
「アルコール依存症」と「アルコール中毒」の違い
似たような言葉である「アルコール中毒」と「アルコール依存症」。これらは同じものなのでしょうか。それとも全く異なるものなのかをまずは確認してみましょう。
1、「アルコール中毒」とは
「アルコール中毒」には① 「急性アルコール中毒」と② 「慢性アルコール中毒 」の2種類があります。
①「急性アルコール中毒」とは、 短時間に大量のアルコール飲料(エタノール)を摂取することで、意識を失い生命さえも危険な酩酊(酷く酒に酔うこと)状態となってしまう。
②「 慢性アルコール中毒」 とは、長い期間において大量のアルコール飲料(エタノール)を摂取したことにより、肝臓機能に障害(肝硬変等)が生じたり、栄養不足になることで神経系の異常(認知症等)となってしまう。
そして、「アルコール中毒」は、厳密には精神疾患ではなく、身体疾患です。
※エタノールというアルコールの一種の摂り過ぎによりアルコール中毒に陥る。
2、「アルコール依存症」とは
俗に呼ばれる“アル中”とは、厳密には「アルコール依存症」を指します。
「アルコール依存症」とは、「アルコール摂取に関するコントロールが効かなくなった状態」を言います。
次は、これら「アルコール中毒」や「アルコール依存症」で障害年金を請求できるのかをみていきたいと思います。
障害年金請求をお考えの方へ
障害年金を受給するには、一般的には次の条件を満たす必要があります。
障害年金を受給する為の条件
ここでは、「障害年金」を受給する為の条件について概要を説明します。
(1)「初診日」がいつなのか解ること
国民年金、厚生年金、共済年金へ加入していた期間中に、その障害の原因となった病気やケガを医師や歯科医師に診察してもらっていることが必要です。その診察を始めて受けた日を「初診日」言います。
この「初診日」がいつのなのか解ることが必要です。
(2)「保険料納付要件」を満たしていること
この保険料納付要件が満たされないと、一生この病気やケガを原因とする障害年金はもらえないので、大変重要な要件です。
初診日の前日に、その初診日のある月の、前々月までの期間の3分の2以上が、次のいずれかの条件に当てはまっている必要があります。
・保険料を納めた期間(会社員や公務員の配偶者だった期間も含む)
・保険料を免除されていた期間
・学生納付特例又は若年者納付猶予の対象期間
なお、被保険者でない20歳前の傷病により障害の状態になった方については、保険料納付要件は問われません。
(3)障害認定日以降に一定程度以上の障害状態にあること
障害年金を受けられるかどうかは、障害認定日以降に障害認定基準以上の障害状態にあること。
「障害年金」を受給する為の条件について詳しくお知りになりたい方は、こちらをクリックして下さい。
『障害認定基準』を確認してみる
1,「アルコール中毒」で「肝硬変」になった場合の障害認定基準
「肝硬変」は、発症原因によって、病状、進行状況が異なる為、各疾患固有の病態に合わせて障害年金の認定がされます。
「肝硬変」の内、「アルコール性肝硬変」については、継続して必要な治療を行っていること及び検査日より前に180 日以上アルコールを摂取していないことが必要ですので注意が必要です。
肝疾患の障害認定基準
障害等級 1級 | ・身体の機能の障害又は長期(当該疾病の認定の時期以後少なくとも1年以上の療養が必要)にわたる安静を必要とする病状が日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの。 この「日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度」とは、他人の介助を受けなければほとんど自分の用を弁ずることができない程度のものである。 肝疾患重症度判定検査成績で、 1,総ビリルビン(T-Bil)が3mg/dl以上、 2,血清アルブミンが2.8g/dl未満、 3,血小板数が5万/μl未満、 4,プロトロビン時間(PT)が40% 未満・6秒以上延長、 5,アルカリフォスファターゼ(ALP)が異常値を示し、 6,難治性腹水や脳症(Ⅱ以上)が治療による軽快が見込めず ★1~6の検査成績及び臨床所見のうち、「高度異常を3つ以上」示すもの又は「高度異常を2つ及び中等度の異常を2つ以上」示すもの、 且つ7,一般状態が、 (オ)身のまわり のことが出来ず、常に介助を必要とし、終日就床を強いられ、活動の範囲が概ねベッド周辺に限られるもの |
障害等級 2級 | ・身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が、日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの。 この「日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度」とは、必ずしも他人の助けを借りる必要はないが、日常生活は極めて困難で、労働により収入を得ることができない程度のものである。 肝疾患重症度判定検査成績で、1,総ビリルビン(T-Bil)が2mg/dl以上3mg/dl未満、 2,血清アルブミンが2.8g/dl以上3.5g/dl未満、 3,血小板数が5万 /μl以上10万/μl未満、 4,プロトロビン時間(PT)が40%以上50%未満・4秒以上6秒未満延長、 5,アルカリフォスファターゼ(ALP)とコリンエステラーゼ(ChE)が異常値を示し、 6,腹水や脳症(Ⅰ)は治療による軽快が見込め、 ★1~6の検査成績及び臨床所見のうち「中等度又は高度の異常を3つ以上」示すもの、 且つ7,一般状態が、次に掲げる状態のいずれかに該当するもの (エ)身のまわりのある程度のことは出来るが、しばしば介助が必要で、日中の50%以上は就床しており、自力では屋外への外出などがほぼ不可能となったもの (ウ)歩行や身のまわりのことは出来るが、時に少し介助が必要で、軽労働は出来ないが、日中の50%以上は起居しているもの |
障害等級 3級 | ・労働が著しい制限を受けるか又は労働に著しい制限を加えることを必要とする程度のものとする。 また、「傷病が治らないもの」にあっては、労働が制限を受けるか又は労働に制限を加えることを必要とする程度のものとする。 肝疾患重症度判定検査成績で、 1,総ビリルビン(T-Bil)が2mg/dl以上3mg/dl未満、 2,血清アルブミンが2.8g/dl以上3.5g/dl未満、 3,血小板数が5万 /μl以上10万/μl未満、 4,プロトロビン時間(PT)が40%以上50%未満・4秒以上6秒未満延長、 5,アルカリフォスファターゼ(ALP)とコリンエステラーゼが異常値を示し、 6,腹水や脳症は治療による軽快が見込め 、★1~6の検査成績及び臨床所見のうち「中等度又は高度の異常を2つ以上」示すもの、 且つ7,一般状態が、次に掲げる状態のいずれかに該当するもの (イ)歩行や身のまわりのことは出来るが、時に少し介助が必要で、軽労働は出来ないが、日中の50%以上は起居しているもの (ウ)軽度の症状が有り、肉体労働は制限を受けるが、歩行・軽労働・軽い家事・事務などは出来るもの |
区分 | 一般状態 |
ア | 無症状で社会活動ができ、制限を受けることなく、発病前と同等にふるまえるもの |
イ | 軽度の症状があり、肉体労働は制限を受けるが、歩行、軽労働や座業はできるもの 例えば、軽い家事、事務など |
ウ | 歩行や身のまわりのことはできるが、時に少し介助が必要なこともあり、軽労働はできないが、日中の50%以上は起居しているもの |
エ | 身のまわりのある程度のことはできるが、しばしば介助が必要で、日中の50%以上は就床しており、自力では屋外への外出等がほぼ不可能となったもの |
オ | 身のまわりのこともできず、常に介助を必要とし、終日就床を強いられ、活動の範囲がおおむねベッド周辺に限られるもの |
2,アルコール依存症、アルコール中毒で認知症になった場合の所外認定基準
症状性を含む器質性精神障害
(1)症状性を含む器質性精神障害(高次脳機能障害を含む)とは、先天異常、頭部外傷、変性疾患、新生物、中枢神経等の気質障害を原因として生じる精神障害に、膠原病や内分泌疾患を含む全身疾患による中枢神経障害等を原因として生じる症状性の精神障害を含むものである。
(2)なお、アルコール、薬物等の精神作用物質の使用による精神及び行動の障害(以下「精神作用物質使用による精神障害」という。)につていもこの項に含まれます。
(3) また、症状性を含む器質性精神障害とその他認定の対象となる精神疾患が併存しているときは、併合(加重)認定の取り扱いは行わず、諸症状を総合的に判断して認定する。
障害等級 1級 | 高度の認知障害、高度の人格障害、その他の高度の精神神経症状が著明なため、常時の援助が必要なもの |
障害等級 2級 | 認知障害、人格変化、その他の精神神経症状が著明なため、日常生活が著しい制限を受けるもの |
障害等級 3級 | 1、認知障害、人格変化は著しくないが、その他の精神神経症状があり、労働が制限を受けるもの 2、認知障害のため、労働が著しい制限を受けるもの |
(4) 脳の器質障害については、精神障害と神経障害を区分して考えることは、その多 岐にわたる臨床症状から不能であり、原則としてそれらの諸症状を総合して、全体 像から総合的に判断して認定する。
(5) 精神作用物質使用による精神障害
ア アルコール、薬物等の精神作用物質の使用により生じる精神障害について認定 するものであって、精神病性障害を示さない急性中毒及び明らかな身体依存のみられないものは、認定の対象とならない。
イ 精神作用物質使用による精神障害は、その原因に留意し、発病時からの療養及 び症状の経過を十分考慮する。
(6) 高次脳機能障害とは、脳損傷に起因する認知障害全般を指し、日常生活又は社会生活に制約があるものが認定の対象となる。その障害の主な症状としては、失語、失行、失認のほか記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害などがある。
なお、障害の状態は、代償機能やリハビリテーションにより好転も見られることから療養及び症状の経過を十分考慮する。
また、「失語の障害」については、「 音声又は言語機能の障害」の認定要領により認定する。
(7) 日常生活能力等の判定に当たっては、身体的機能及び精神的機能を考慮の上、社会 的な適応性の程度によって判断するよう努める。
また、現に仕事に従事している者に ついては、労働に従事していることをもって、直ちに日常生活能力が向上したものと 捉えず、その療養状況を考慮するとともに、仕事の種類、内容、就労状況、仕事場で 受けている援助の内容、他の従業員との意思疎通の状況等を十分確認したうえで日常 生活能力を判断すること。
上記内容をご確認して頂けるとお解かりのように「身体依存」があるかどうかが一つのポイントになります。
もし「身体依存」を確認できない場合は、「器質性精神障害」での障害年金の請求は難しいと思われます。
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