振動障害による障害年金申請のポイント
1,振動障害の基礎知識と症状
(1)振動障害とは
振動障害とは局所振動による障害、すなわちチェーンソーやグラインダー等による工具・機械・装置などの振動が主として手・腕を通して身体に伝達されることにより生じる、①末梢循環障害、②末梢神経障害それに③運動器(骨・関節系)障害の3障害から構成されています。この障害を手腕振動障害などという呼び方をすることもありますが、我が国では振動障害という名称が公式に使われています。国際的にはHand-Arm Vibration Hazard(HAVS)で統一しようとされていますが、Vibration Syndromeも使われています。一般的には末梢循環障害の症状の中で特徴的なレイノー現象から、いわゆる白ろう病とも言われています。
振動障害とはあくまで局所振動による障害のことをいい、全身振動による障害とは区別しています。それは局所振動と全身振動による障害の内容が異なるからです。局所振動による障害は上述の3障害ですが、全身振動による影響は大きく分類して、影響と障害に分けれています。影響は車や船酔いなどにみられる一過性の自律神経機能失調状態であります。障害としては腰痛や内臓機能障害などが指摘されていますが、これらの障害に基づく症状と他の一般的な疾患による症状との区別ができないため、全身振動の身体に対する影響や障害はまだ十分に解明されていないのが実状です。現時点では全身振動による腰痛が問題意識されつつあります。
振動障害:労災疾病等医学研究室普及サイト
(2)振動障害を起こすような局所振動を発生させる工具
ピストン内蔵工具(打撃工具)
内蔵するフリーピストンの往復運動でたがね等を打撃し、この衝撃で金属、岩石等の穿孔、切削、ハツリ等の加工またはつき固め等を行う工具です。代表的な工具として削岩機、エアハンマー、電動ハンマーなどがあります。内燃機関内蔵工具(可搬式のもの)
内燃機関(主として2サイクルガソリンエンジン)を動力源として回転するエンドレスチェーン、カッター等により加工物等を切断する工具です。この種の工具の振動は、主にエンジンの回転に伴い発生しますが、切断の際にも発生します。チェーンソー、刈払機、エンジンカッターなどがこの範疇に入る代表的工具です。振動体内蔵工具
偏心モーター、振動子等を内蔵し、これによって発生した振動を利用して、つき固め、充填または打抜き、切断等の板金加工等を行う工具です。 タイタンパー、バイブレーター、振動シャーなどが代表的な工具です。回転工具
電動モーター、エアモーター等により回転するカッター、砥石等により研磨、研削、ハツリ、切断等の加工を行う工具をいい、工具それ自体は振動を発生しないが作業に伴い振動が発生します。代表的な工具としてはスインググラインダー、固定グラインダー、カッター 類などがあります。締付工具
ナット、ビス等の締め付けに用いる工具であり、締付機構のクラッチの作動に際し、振動が発生します。各種エアレンチが代表的工具です。
(3)振動障害の症状
振動障害の症状は、上記の通り下記の3つ症状があります。
①、抹消循環障害
体の末端に正常に血液が循環しない障害です。具体的には、手指の冷えと、レイノー現象が出ます。手指が冷やすと発作的に白くなる現象で、白くなるとき、手指の感覚が鈍くなり、しびれを感じることがあるようです。またしびれが出たり消えたりするときに、指が痛むこともあります。
②、抹消神経障害
手指のしびれ、知覚が鈍くなったりする障害です。夜、寝ていても手指のしびれで何度も目を覚ましてしまうこともあります。神経障害が進むと、手で細かい作業が出来なくなることがあります。
③、運動器障害(骨・関節系の障害)
手指・手・ひじの関節に痛みが出る症状です。変形が強くなると、ひじの関節に尺骨神経麻痺が起きてしまいます。
2,振動障害と障害年金の関係性
振動障害は、障害年金の支給対象の疾病です。ですが、振動障害と診断を受けただけでは障害年金は支給されません。障害年金を受給する為の受給要件を満たさないと障害年金の受給が出来ません。
そこで、障害年金の受給要件をお伝えします。
(1)振動障害による【国民年金・厚生年金】障害年金について
《国民年金・厚生年金:障害年金 の受給要件》
国民年金・厚生年金の障害年金を受け取るためには、以下の3つの要件を満たす必要があります。
①「初診日要件」では、国民年金や厚生年金に加入している期間中に、その障害の原因となった病気やケガについて医師の診察を受けた日を「初診日」とします。この初診日が障害年金の受給資格や支給額を左右します。
②「保険料納付要件」では、初診日の前日に、被保険者期間の3分の2以上が保険料を納付または免除されている必要があります。未納期間が多いと受給資格を失うため、学生時代などには保険料免除の手続きを行うことが重要です。
③「障害認定日要件」では、初診日から1年6か月(障害認定日)後か、それ以前に症状が固定した時点で、一定の障害状態であることが求められます。
これらの要件を満たすことが障害年金受給の鍵となります。※もっと詳しく知りたい方はこちらをクリック
ⅰ)一定の障害状態とは
障害年金の受給要件①②については、ここでは説明を省略し要件③「障害認定日要件」のみの説明をします。
※障害年金の受給要件①と②の説明は、別ページでしていますので、そちらをご覧ください。
この「障害認定日要件」とは、ただ単に振動障害と診断を受けただけでは障害年金は支給されず、障害認定日以降に診断を受けた振動障害の症状の程度が、障害年金を受給できる程度の症状であることが受給要件③を満たすことになります。
ⅱ)国民年金・厚生年金の障害認定基準
1級 | ・両上肢(左および右手両方の肩関節,ひじ関節及び手関節)のの機能に著しい障害を有する(用を全く廃した)もの ・両上肢のすべての指の用を全く廃した(著しい障害を有する)もの |
2級 | ・両上肢の3大関節中それぞれ2関節以上の関節が全く用を廃したもの ・両上肢のおや指及びひとさし指又は中指の用を全く廃した(著しい障害を有する)もの(両上肢のおや指の用を全く廃した程度の障害があり、それに加えて、両上肢のひとさし指又は中指の用を全く廃した程度の障害 があり、そのため両手とも指間に物をはさむことはできても、一指を他指に対立させて物をつまむことができない程度の障害) ・一上肢の用を全く廃したもの ・一上肢のすべての指の用を全く廃したもの ・身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの |
3級 | ・一上肢の3大関節のうち、2関節の用を廃したもの ・上腕骨に偽関節を残し、運動機能に著しい障害を残すもの ・橈骨及び尺骨の両方に偽関節を残し、運動機能に著しい障害を残すもの ・おや指及びひとさし指を併せ一上肢の4指の用を廃したもの ・2関節の用を廃したもの ・身体の機能に、労働が著しい制限を受けるか、又は労働に著しい制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの(例えば、一上肢の3大関節中1関節の筋力が半減しているもの) |
《国民年金・厚生年金:障害年金の年金額》
ⅰ)障害基礎年金(令和6年度4月1日現在)
障害基礎年金は定額です。1級は2級の1.25倍となっています。
区分 | 障害等級1級の年金額 |
67歳以下の方(昭和31年4月2日以後生まれ) | 816,000円×1.25=1,020,000円(月額 85,000円)(+子供がある場合は更に加算額) |
68歳以上の方(昭和31年4月1日以前生まれ) | 813,700円×1.25=1,017,125円(月額 84,760円)(+子供がある場合は更に加算額) |
区分 | 障害等級2級の年金額 |
67歳以下の方(昭和31年4月2日以後生まれ) | 816,000円円(月額 68,000円)(+子供がある場合は更に加算額) |
68歳以上の方(昭和31年4月1日以前生まれ) | 813,700円(月額 67,808円)(+子供がある場合は更に加算額) |
子の加算額
2人まで | 1人につき234,800円 |
3人目以降 | 1人につき78,300円 |
※子とは次の者に限ります。
○18歳年度末(高校を卒業する年齢)までの子供
○障害等級1級または2級の障害状態にある19歳までの子供
ⅱ)障害厚生年金 (令和6年度4月1日現在)
・障害等級1級
報酬比例の年金額(厚生年金期間が300月未満の場合、300月で計算) × 1.25 + 配偶者加給年金額(65歳未満の配偶者 234,800円)
・障害等級2級
報酬比例の年金額 (厚生年金期間が300月未満の場合、300月で計算) + 配偶者加給年金額(65歳未満の配偶者 234,800円)
・障害等級3級
報酬比例の年金額
障害等級3級 | 最低保証額 |
昭和31年4月2日以後生まれの方 | 612,000 円 |
昭和31年4月1日以前生まれの方 | 610,300 円 |
※【国民年金・厚生年金】障害年金の年金額について詳しく知りたい方はこちらをクリックして下さい。
(2)【労災保険】障害補償年金の受給要件とは?
振動障害に関しては、労災保険で業務上の原因で疾病が発生し、障害が残った場合に障害補償給付が支給される可能性があります。
障害認定基準について
《症状及び障害について》 (1) 自覚症状について 振動障害の自覚症状としては、上記1(3)に掲げるもののほか、不快感、手掌発汗、筋肉痛、肩こり、頭重感、頭痛、不安感、睡眠障害等がみられることがある。 (2) 末梢循環障害、末梢神経障害及び運動機能障害について 上記1(3)の末梢循環障害、末梢神経障害及び運動機能障害のは握は、原則として下記の検査によることとし、検査結果の評価は、別添2によること。 なお、サーモグラフィー、血管撮影、筋電図、神経伝導速度検査等個々の事案に応じて医師が有効であると判断する方法により前記障害の検査を行っているときは、その結果を参考とすること。 (3) レイノー現象について イ レイノー現象(いわゆる白ろう現象)は、振動障害に最も特徴的な症状であるので、その発現が確認されたものについてはこのことのみで本文記の2の要件を満たすものとした。 ロ レイノー現象は、全身が寒冷にさらされ、冷感を覚えたとき等に、手指血管の攣縮発作により、手指が発作的に蒼白となる現象をいい、通常、手指のうち示指、中指、環指又は小指の末節から中節さらには基節にかけて、明瞭かつ画然と発現する。その多くは10分ないし20分程度で発作前の状態に回復するが、その過程で痛みやしびれを伴うのが通例である。 ハ レイノー現象の確認は、医師が視認又は客観的な資料によってその発現の有無について判断したところによる。
振動障害に関する検査項目及び検査手技について 次の1から3までに掲げる検査の実施に当たっては、検査項目ごとに掲げる留意事項のほか次の点に留意すること。 ① 皮膚温、痛覚その他の検査に当たっては、それらの測定値に外気温ばく露の影響が残らないよう、必ず検査前に室温20℃~23℃の室内において30分以上の安静時間をとること。なお、気温及び室温は必ず記録しておくこと。 ② 冷却負荷し、冷却負荷終了直後と5分目及び10分目に行う検査にあっては、その都度手指の皮膚温、爪圧迫、指先の振動覚、痛覚の順序で行うこと。 ③ 運動機能検査は、被検者の協力が必要であり、また巧拙が大きく影響するので、検査の実施に当たっては十分留意すること。 ④ 特別な異常検査値が得られた場合は、検査手技に問題がなかったかどうかについて確認すること。 1 末梢循環機能検査 (1) 手指の皮膚温 ① 常温下で両手の示指、中指、環指及び小指の末節の掌側中央について測定する。 ② 左手(右手だけレイノー現象を訴えるときは右手)を冷却負荷し、浸漬手の示指、中指又は環指のうち1指について、末節の掌側中央について冷却負荷開始6分目から1分毎に測定し、10分目の測定終了と同時に手を冷水から引き上げ、乾いたタオルでふき、さらに手を冷水から引き上げた時を基点として5分目及び10分目に測定する。(注) イ 皮膚温計は、感温部が小さく、測定の所要時間が短いサーミスター式又は熱電対式のものを選ぶこと。 ロ 感温部は、十分皮膚に密着させないと正しい値が得られないので注意すること。 ハ 喫煙により末梢皮膚温が低下するので、測定前1時間は禁煙させること。また、測定時には必ず喫煙の有無を確認すること。 ニ 常温下の皮膚温は、平常時でも若干の変動があるとされているので留意すること。したがって、常温時の測定は、できれば適当な時間をおいて2回以上行うようにすること。 ホ 冷却負荷は、手を5±0.5℃の冷水中に手首まで10分間浸漬する方法によること(以下の検査において同じ。)。 ヘ 冷水槽は、椅座位で腕を下方に伸ばした状態で手首まで浸漬できるような高さ及び位置とすること。 ト 冷却負荷中、浸漬している部分が容器及び氷塊に触れないように気をつけさせること。 チ 冷水槽の水は、ときどき攪拌し、温度を一定かつ一様に保つこと。 リ 冷却負荷の際、皮膚温計の感温部の測定指への取りつけは、紙ばんそうこうを用いて固定し、白色ワセリンで防水すること。また、ばんそうこうは、指の血流を阻害しないように用いること。なお、水中での測定は、測定時の固定の方法の如何によっては、水温の影響を受け易いので、慎重に行うこと。 ヌ 外傷のある指はさけること。 ル 冷却負荷中被検者が胸苦しさ、狭心痛などを訴えた場合には、直ちに中止すること。 ヲ 高血圧、心筋梗塞、冠動脈硬化症又は心不全の既往歴のある者には、心電図などをよく検討したうえで、支障がないと認められた場合にのみ実施すること。 (2) 爪圧迫 ① 常温下で両手の示指、中指及び環指の3指について行う。方法は、1指ごとに、軽くにぎった検者の手の栂指と示指で被検者の爪の部分を挟み、ついで10秒間強く押え、はなした後、爪の退色が元に戻るまでの時間を測定する。 ② 左手(右手だけレイノー現象を訴えるときは右手)を冷却負荷し、冷却負荷終了直後と、5分目及び10分目に示指、中指又は環指中の1指(同時に皮膚温を測定している場合は、測定していない指で色が悪くない指)について行う。(注)イ 時間はストップウォッチを用いて測定すること。 ロ 被保険者の手の高さは、心臓の高さとし、指の力を完全に抜かせた状態で行うこと。 2 末梢神経機能検査(感覚検査) (1) 痛覚 ① 常温下で、両手の示指、中指及び環指の手指中節背側の皮膚の薄い部位で検査する。方法は、この箇所の小範囲について痛覚計の先で軽く4~5回突き、痛覚の有無を検査し、この部位に鈍麻を認めれば、さらに鈍麻の範囲をみるため、前腕橈・尺側及び上腕橈・尺側について検査する。 ② 左手(右手だけレイノー現象を訴えるときは右手)を冷却負荷し、常温下で検査した指のうちの1指について、冷却負荷終了直後と、5分目及び10分目に検査する。(注) イ 痛覚計は、注射管方式(1/2静脈用注射針を注射管に取りつけたもの)、テンションメーター式又はペンシル式のいずれでもよい。 ロ 外傷のある指及び爪圧迫テストを行った指は、さけること。 ハ 検査の際は、最初に手背部等で試行し、痛覚を確認させてから行うこと。 ニ 検査に当たっては、軽く目を閉じさせること。 (2) 指先の振動覚 ① 常温下で両手の示指、中指及び環指の末節の掌側中央の部位で検査する。方法は、手掌を水平に保ち、指を軽く伸ばし、指先を軽く振動子に接触させて行う。 ② 左手(右手だけレイノー現象を訴えるときは右手)を冷却負荷し、常温下で測定した指のうちの1指について冷却負荷終了直後と、5分目及び10分目に検査する。(注) イ 振動覚は、原則として純正弦波振動により検査すること。(リオンAu―02型等によることが望ましい。) ロ 周波数は、原則として62.5、125、250Hzを用いること。冷却負荷後は、1周波のみで差し支えない。 ハ 外傷のある指及び爪圧迫テストを行った指はさけること。 ニ はじめに振動感覚を確認させた後、上昇法を2~3度くり返して測定すること。ホ 検査に当たっては、軽く目を閉じさせること。 3 運動機能検査 (1) 握力(最大握力、瞬発握力)直立し腕を下方に伸ばしたまま、左右とも最大努力させ、5秒間隔で2回測ってその大きい方の値をとること。(5回法の最初の2回値でよ。)(注) イ 検査前に1~2回練習をさせることが望ましい。 ロ 握力計は、校正済みのスメドレー式握力計を用いること。 (2) 維持握力次の①及び②について実施すること。 ① 5回法直立し、腕を下方に伸ばしたまま最大努力させ、5秒間隔で左右交互にこれを5回くり返し、1回目及び2回目の値のうちの大きい方の値と4回目及び5回目の値のうち小さい方との値との差をその値とする。 ② 60%法椅座位で握力計を机の上にのせ、肘を約90°に曲げた姿勢で手掌を上に向け、瞬発握力の60%の値を被検者に針を見せながら保持させ、維持できる時間をストップウォッチで計る。なお、本検査は5回法の実施後、少なくとも10分以上の時間を置いて行うこと。(注) イ 握力計は、校正済みのスメドレー式握力計を用いること。 ロ 60%値が、かなり大きい場合、維持時間が短くなる傾向があるので、評価に当たって留意すること。 (3) つまみ力拇指を下に測定指を上にし、測定指の遠位指節間関節を伸展させ、他の指を軽く伸ばした状態で拇指と示指及び中指間のつまみ力を測定する。(注) イ つまみ力計は、労研エスメス式つまみ力計を用いることが望ましいこと。 ロ 指を重ねないように注意すること。 (4) タッピングタッピング測定器を用い、椅座位で左手、右手交互に示指及び中指を1指ずつ30秒間できるだけ早く打たせ、30秒値を測定する。できれば10秒、20秒値についても測定することが望ましい。(注) イ タッピング測定器は、労研エスメス式タッピング測定器を用いることが望ましいこと。 ロ 指は3~4cmの距離を上下することが望ましいこと。 ハ 手掌は軽く測定台上に置き、はなさないこと。 (5) その他骨、関節、筋肉腱等の検査(注)エックス線検査を行う場合は、直接撮影で行うこと。頸椎を撮影するときは、両肩をできるだけ下げ第5頸椎に焦点を合わせること。
振動障害の認定基準について:厚生労働省
《検査成績の評価について》 1 末梢循環障害次の各号((1)~(3))の検査結果を総合的に判断して、末梢循環機能の異常の有無を判定すること。 (1) 手指の皮膚温 ① 常温での皮膚温が明らかに低いもの ② 常温での皮膚温が各指間で明らかな差のあるもの(「各指」とは、示指、中指、環指及び小指の4指をいう。) ③ 冷却負荷中の皮膚温の明らかな低下又は冷却負荷後の皮膚温の回復に明らかな遅延が認められるもの( 2) 爪圧迫 ① 常温での爪圧迫テストにおいて、回復時間に明らかな遅延が認められるもの ② 冷却負荷後の爪圧迫テストにおいて、回復時間に明らかな遅延が認められるもの( 3) その他前記(1)及び(2)の検査のほか、指先容積脈波又はアレンテスト(手掌動脈弓の循環テスト)等の末梢循環機能検査を実施した場合において、それらに明らかな異常が認められるもの 2 末梢神経障害(感覚障害)次の(1)から(3)までに掲げる検査結果を総合的に判断して、末梢神経機能(感覚)の異常の有無を判断すること。 (1) 痛覚 ① 常温における痛覚テストにおいて、指の痛覚に明らかな鈍麻が認められるもの ② 冷却負荷後の痛覚テストにおいて、指の痛覚閾値に明らかな上昇が認められるもの③ 冷却負荷後における指の痛覚閾値の回復に明らかな遅延が認められるもの (2) 指先の振動覚 ① 常温における振動覚テストにおいて、指先の振動覚に明らかな鈍麻が認められるもの ② 冷却負荷後の振動覚テストにおいて、指先の振動覚閾値に明らかな上昇が認められるもの ③ 冷却負荷後における指先の振動覚閾値の回復に明らかな遅延が認められるもの (3) その他前記(1)及び(2)の検査のほか、温覚、冷覚等の感覚テストを実施した場合において、感覚の明らかな鈍麻等が認められるもの 3 運動機能障害次の(1)から(5)までに掲げる検査結果を総合的に判断して、運動機能の異常の有無を判定すること。 (1) 握力 握力の明らかな低下が認められるもの (2) 維持握力維持握力の明らかな低下が認められるもの (3) つまみ力つまみ力の明らかな低下が認められるもの (4) タッピングタッピング機能の明らかな低下が認められるもの (5) その他前記(1)から(4)までに掲げる検査のほか、骨、関節、筋肉又は腱等の検査を実施した場合において、それに明らかな異常等が認められるもの 4 留意事項 (1) 以上1から3までに掲げる障害の程度を総合判断するに当たっては、次の所見の有無及びその程度並びに1から3までに掲げる障害が外傷その他の原因によるか否かにも十分配意することが必要である。 ① 手若しくは前腕部の筋萎縮又は手指の拘縮 ② エックス線検査による肘関節その他の部位の異常 (2) 評価に関し使用される用語の意義は次のとおりである。 ① 「常温」……20℃~23℃をいう ② 「明らか」……正常範囲を超え又は下回ることが確認される場合をいう ③ 「閾値」……刺激によって反応がひき起こされる場合には、刺激の強さがある値に達しなければその反応は見られないものである。この反応の現われる刺激の強さの最低値をいう。(3) 検査項目のうちには、加齢の影響があるものもあるので、検査値の評価に当たっては、この点を考慮する必要がある。
振動障害の認定基準について:厚生労働省
具体的にどのような障害の程度が、障害等級に該当するのかを下の表でご確認下さい。
※なお、下表は、一般的に用いるだろうものをのみ一部抜粋しておりますのでご了承下さい。
障害 等級 | 給付の内容 | 身体障害 |
---|---|---|
第一級 | 当該障害の存する期間一年につき給付基礎日額の三一三日分 | ・神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの ・両上肢をひじ関節以上で失つたもの ・両上肢の用を全廃したもの |
第二級 | 同二七七日分 | ・神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの |
第三級 | 同二四五日分 | ・神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの |
第四級 | 同二一三日分 | ・両手の手指の全部の用を廃したもの |
第五級 | 同一八四日分 | ・神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、 特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの |
第六級 | 同一五六日分 | 一上肢の三大関節中の二関節の用を廃したもの |
第七級 | 同一三一日分 | ・神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの ・一手の五の手指又は母指を含み四の手指の用を廃したもの ・一上肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの |
第八級 | 給付基礎日額の五〇三日分 | ・一手の母指を含み三の手指又は母指以外の四の手指の用を廃したもの ・一上肢の三大関節中の一関節の用を廃したもの ・一上肢に偽関節を残すもの |
第九級 | 同三九一日分 | ・神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの ・一手の母指又は母指以外の二の手指を失つたもの ・一手の母指を含み二の手指又は母指以外の三の手指の用を廃したもの |
第一〇級 | 同三〇二日分 | ・一手の母指又は母指以外の二の手指の用を廃したもの ・一上肢の三大関節中の一関節の機能に著しい障害を残すもの |
第一一級 | 同二二三日分 | |
第一二級 | 同一五六日分 | ・ 鎖骨、胸骨、ろく骨、肩こう骨又は骨盤骨に著しい変形を残すもの ・ 一上肢の三大関節中の一関節の機能に障害を残すもの ・ 長管骨に変形を残すもの ・ 一手の示指、中指又は環指の用を廃したもの ・ 局部にがん固な神経症状を残すも |
第一三級 | 同一〇一日分 | ・一手の小指の用を廃したもの |
第一四級 | 同五六日分 | ・ 一手の母指以外の手指の遠位指節間関節を屈伸することができなくなつたもの ・ 一足の第三の足指以下の一又は二の足指の用を廃したもの ・ 局部に神経症状を残すもの |
まとめ
振動障害による障害年金申請は複雑な手続きが必要ですが、適切なサポートを受けることで受給の可能性を大きく高めることができます。
札幌障害年金相談センターでは、専門知識を活かし、お客様の不安を解消しながら確実な申請をサポートします。振動障害でお悩みの方、まずはお気軽にご相談ください。あなたの生活を支える障害年金の受給を全力でサポートいたします。
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障害年金は、傷病や障害により労働や生活に支障をきたす方への支援制度で、老齢年金と同じ仕組みで運営されています。遠慮せず申請が推奨されます。また、所得保障には傷病手当金や生活保護、失業保険など複数の制度があり、それぞれ条件や手続きが異なります。特に傷病手当金は迅速な支給が特徴で、障害年金の受給までのつなぎ役となります。ただし、各制度は支給調整が行われ、重複支給は避けられます。申請時の注意点やサポートの必要性も重要です。
障害年金の受給金額は、利用する年金制度と障害等級によって異なります。受給金額を確認するには、自身が利用できる制度と障害等級を把握する必要があります。障害等級は1級が最重度で、日常生活で他人の介助が必要な状態、2級は日常生活が著しく制限される状態、3級は労働に制限がある状態を指します。障害基礎年金は定額です。障害厚生年金は報酬比例で計算され、配偶者加給年金などが加算される場合もあります。申請手続きや認定基準の確認は重要です。
障害年金の請求には、以下の4つの書類が主に必要です。
①診断書: 障害内容に応じた8種類があり、詳細な治療経過や生活状況を記載。申請成功の鍵となるため、主治医と協力して作成します。
②病歴・就労状況等申立書: 発病から現在までの病状や生活状況を具体的に記載する重要書類。診断書との整合性が求められます。
③受診状況等証明書: 初診時の医療機関が診断書作成機関と異なる場合に必要。取得困難な場合は理由書を提出します。
④年金請求書: 基礎年金番号やマイナンバーを用いて提出。申請内容に応じて配偶者情報などを記載します。
これらを整え、慎重に申請を進めましょう。
障害年金は、老齢年金と同じ公的年金制度の一部で、障害を負った場合に支給される権利です。受給には「初診日」の特定、保険料納付要件、認定日以降の障害状態の3条件が必要です。障害年金には基礎年金、厚生年金、共済年金の3種類があり、障害等級や加入制度によって支給額が異なります。申請には診断書や病歴申立書などの書類が必須で、認定基準に基づいた正確な作成が求められます。初診日や請求方法の選択も重要で、専門家の支援が推奨されます。
札幌障害年金相談センターでは、正確な障害年金申請を目指し、診断書と病歴・就労状況等申立書の作成を支援しています。診断書は主治医が作成しますが、短い診察時間や患者の生活状況の不十分な把握が問題となることがあります。一方、申立書では感情的な記述や出来事の羅列が障害認定基準に適合しないことが課題です。これらの問題を解決するため、障害認定基準を理解し、必要に応じて書類内容を主治医と相談しながら適切に修正する努力が重要です。
障害年金は、肢体障害や視覚障害など外見で分かるものだけでなく、多様な傷病が対象です。対象疾患には、白内障や緑内障などの視覚障害、感音性難聴などの聴覚障害、脳卒中や脳梗塞などの脳疾患、統合失調症や発達障害などの精神疾患、心筋梗塞や高血圧症、腎不全や糖尿病性合併症などが含まれます。ただし、症状や傷病名によって対象外となる場合もあります。判断が難しい場合は札幌障害年金相談センターにお気軽にご相談下さい。
障害年金の申請には診断書が必要ですが、実際の症状より軽く記載されることがあり、申請者から不満の声が寄せられます。その原因として、医師が日常生活の実態を把握できない、申請者が正確に伝えられない、または医師が申請者の立場を考慮していないことが挙げられます。この結果、年金額が減額されたり受給できない場合があります。当センターでは、こうした問題を防ぐため、札幌障害年金相談センターは適切な申請を支援しています。
障害年金は、日本の2階建て年金制度に基づき、障害基礎年金、障害厚生年金、障害共済年金の3種類に分かれます。障害基礎年金は全員が対象で、1級と2級の等級があり、国民年金加入者に支給されます。厚生年金加入者は障害厚生年金を受け取る権利があり、1~3級の等級が設定されています。共済組合加入者には障害共済年金が適用され、職域年金部分が追加されるのが特徴です。初診日の時点での年金加入状況により、受給対象や申請先が異なります。
障害年金を受給するには、障害が行政の定める認定基準に適合していることを証明する必要があります。そのため、診断書は最も重要な書類であり、適切な内容が記載されるよう担当医と十分に話し合うことが大切です。特に初診日の特定が困難な場合や過去の初診日で手続きが複雑になるケースでは、専門家に相談することで解決の可能性が高まります。当事務所では診断書のチェックや医師への依頼時のアドバイスを提供しています。
障害年金を受給するには、以下の3つの要件を満たす必要があります。
- 初診日要件: 障害の原因となる病気やケガの初診日が年金加入期間内であること。初診日が特定できない場合は受給が難しくなるため重要です。
- 保険料納付要件: 初診日の前日までの期間で、3分の2以上が保険料納付または免除期間であること。未納が多いと受給資格を失うため、学生時代の免除申請が推奨されます。
- 障害認定日要件: 初診日から1年6か月後または症状が固定した時点で一定の障害状態であることが必要。遅れた請求でも最大5年遡及可能です。
障害年金の受給可否は、申請書が提出されると行政が「加入要件」「保険料納付要件」「障害状態要件」を確認することで判断されます。年金事務所や市区町村がまず資格を審査し、その後、日本年金機構の障害年金センターで認定医が障害等級を基準に審査します。審査は書類内容を基に客観的に行われ、3か月程度かかるのが一般的です。支給が決定すると通知が届き、住所や振込先変更時は手続きが必要です。初回支払日は決定日によって異なります。
障害年金の請求手続きは、以下の流れで進められます。まず、電話やメールで相談予約を行い、面談で病気や生活状況を詳しくヒアリングします。その後、初診日や保険料納付要件を確認し、診断書や病歴・就労状況等申立書など必要書類を作成。診断書の記載内容は医師と確認し、必要に応じて修正依頼を行います。完成した書類を年金事務所に提出し、審査には約3か月かかります。支給決定後、初回振込は40~50日後に行われます。
障害年金請求では、初診日時点の年金加入状況が重要です。初診日に年金未加入の場合、請求はできません。また、加入していた年金制度により受給できる年金の種類が異なり、国民年金加入者は障害基礎年金(1級または2級対象)、厚生年金加入者は障害厚生年金(1~3級対象)を受給可能です。障害認定日請求では最大5年遡及可能ですが、事後重症請求では請求日以降の受給のみです。適切な手続きが受給額に影響するため、専門家への相談が推奨されます。
特別障害者手当は、20歳以上で重度の障害があり、日常生活に特別な介護が必要な在宅障害者に支給される手当で、月額26,260円(平成25年時点)です。施設入所や長期入院がなく、所得基準を満たすことが条件です。対象者は複数の重い障害を持つ人や、日常生活に大きな支障がある人が含まれます。申請には、障害者手帳の所持が必須で、書類を市区町村役場に提出します。受給後も現況届や診断書の再提出が必要です。