腎臓の障害認定基準

腎臓の傷病のときの注意点としては、以下の2つがあります。

(1)腎疾患障害は、自覚症状・他覚所見・検査成績・一般状態・治療及び病状の経過・人工透析療法の実施状況・具体的な日常生活状況など総合的に評価して障害認定されます

(2)腎疾患により人工透析療法施行中のものは、原則2級該当ですが、その腎疾患の主要症状や検査成績などによっては1級該当となる場合もあります

腎臓の疾患は、その原因疾患が多岐にわたり、それによって生じる臨床所見、検査所見も、また様々なので、下記のの検査成績による他に、合併症の有無とその程度、他の一般検査及び特殊検査の検査成績、治療及び病状の経過等も参考資料として扱われ、認定時の具体的な日常生活状況等を把握して総合的に認定されます。

 1級  【 慢性腎不全 】
①「内因性クレアチニンクリアランス(Ccr)値が10ml/分未満」、
②「血清クレアチニン濃度(Cr.)が8mg/dl以上」

【 ネフローゼ症候群】
③「1日尿蛋白量 が3.5g/日(以上)」を持続して、
『 血清アルブミン(ALB)3.0g/dl(デシリットル)以下 』又は『 血清総蛋白(TP)6.0g/dl以下 』で、

且つ一般状態が、身のまわりのことが出来ず、 常に介助を必要とし、終日就床を強いられ、活動の範囲が概ねベッド周辺に限られるもの
 2級 【 慢性腎不全 】
①「内因性クレアチニンクリアランス値が10ml/分以上20ml/分未満」、
②「血清クレアチニン濃度が5mg/dl以 上8mg/dl未満」、

【 ネフローゼ症候群 】
③「1日尿蛋白量が3.5g/日(以上)」を持続して、
『 血清アルブミンが3.0g/dl以下 』又は『 血清総蛋白6.0g/dl以下 』で、

且つ一般状 態が、次に掲げる状態のいずれかに該当するもの
(1)身のまわりのある程度のことは出来るが、しばしば介助が必要で、日中の50%以上は就床しており、自力では屋外への外出などがほぼ不可能となったもの
(2)歩行や身のまわりのことは出来るが、時に少し介助が必要で、軽労働は出来ないが、日中の50%以上は起居しているもの
 3級 【 慢性腎不全 】
①「内因性クレアチニンクリアランス値が20ml/分以上30ml/分未満」、
②「血清クレアチニン濃度が3mg/dl以 上5mg/dl未満」、

【 ネフローゼ症候群 】
③「1日尿蛋白量が3.5g/日(以上)」を持続して、
『 血清アルブミンが3.0g/dl以下 』又は『 血清総蛋白6.0g/dl以下 』で、

且つ一般状 態が、次に掲げる状態のいずれかに該当するもの
(1)歩行や身のまわりのことは出来るが、時に少し介助が必要で、軽労働は出来ないが、日中の50%以上は起居しているもの
(2)軽度の症状が有り、肉体労働は制限を受けるが、歩行・軽労働・軽い家事・事務などは出来るもの
1dL(デシリットル)=10分の1L(リットル)=100mL(ミリリットル)

検査成績は、その性質上変動しやすいものです。そこで、腎疾患の経過中において最も適切に病状をあらわしていると思われる検査成績に基づいて申請が行われ認定されることになっています。

(1)「 クレアチニンクリアランス」は、腎機能の指標である糸球体濾過量(GFR)の近似指標。
あくまで近似指標であって、真の糸球体濾過量に対してやや高値となる傾向がある。※腎前性(腎臓に十分な血液量が流れない状態)、腎後性因子( 尿が腎臓を出たある場合)でも低下し、またネフローゼ症候群では高値を示すことがあり、更に年齢、筋肉量、運動などの影響を受けるたりする。
②その為、最近は、推算GFRである「eGFR」が用いられる。
24時間法は、入院患者において「GFR」を評価するために行われる。

引用:BML 検査項目検索

(2)「クレアチニン」とは、血液中の老廃物の一つ。通常、腎臓でろ過され、ほとんどが尿中に排出される。しかし、腎機能が低下している場合、尿中に排出されずに血液中に蓄積されてしまう。この血液中のクレアチニンを「血清クレアチニン値」と呼ばれます。

(3)「尿蛋白」とは、尿に含まれているタンパク質が、正常時よりも多いこと。

一般状態区分表

区分一般状態
無症状で社会活動ができ、制限を受けることはなく、発病前と同等にふるまえるもの
軽度の症状があり、肉体労働は制限を受けるが、歩行、軽労働や座業はできるもの 例えば、軽い家事、事務など
歩行や身のまわりのことはできるが、時に少し介助が必要なこともあり、軽労働はできないが、日中の50%以上は起居しているもの
身のまわりのある程度のことはできるが、しばしば介助が必要で、日中の50%以上は就床しており、自力では屋外への外出等がほぼ不可能となったもの
身のまわりのこともできず、常に介助を必要とし、終日就床を強いられ、活動の範囲がおおむねベッド周辺に限られるもの

腎臓とはどんな臓器?

腎臓は、血液から老廃物をろ過して除去し、不要なものを尿として体外に排出する重要な臓器です。また、体内の水分量や電解質のバランスを保つ役割も担っています。

慢性腎不全とは

慢性腎不全とは、腎臓の機能が数か月から数年にわたり徐々に低下し、正常時の30%以下にまで落ち込んだ状態を指します。自覚症状の乏しい慢性腎臓病(CKD)とも呼ばれ、早期の診断と治療が極めて重要です。症状が進行すると、末期腎不全となり、透析や腎移植が必要になることがあります。

慢性腎不全の代表的な症状

腎臓は「沈黙の臓器」と呼ばれ、症状が顕在化するのは腎機能が大幅に低下した段階です。主な症状としては以下のものが挙げられます。

  1. 尿量の変化: 夜間の尿の増加、早朝の尿の色が薄くなる、または尿量が極端に減少する。
  2. 尿毒症の症状: むくみ、疲労感、食欲不振、かゆみ、動悸、息切れなど。
  3. その他の症状: 貧血、高血圧、骨粗しょう症(骨がもろくなる)など。

糸球体腎炎ネフローゼ症候群を含む。)、腎硬化症多発性嚢胞腎腎盂腎炎に罹患して、その後「慢性腎不全」を生じたものは、両者の期間が長いものであっても、相当因果関係があるものと認められます。

ネフローゼ症候群 とは

ネフローゼ症候群は、尿中に大量のタンパク質が排泄されることにより、血液中のタンパク質濃度が低下し(低たんぱく血症)、その結果として体内にむくみ(浮腫)が生じる疾患です。低たんぱく血症が進行すると、血管内の水分が減少し、血管外に水分と塩分が蓄積されることでむくみが引き起こされます。

進行した場合の影響

重度のネフローゼ症候群では、肺や腹部、心臓、陰嚢に水がたまり、生命に危険を及ぼすことがあります。また、低たんぱく血症により血中のコレステロール値が上昇し、腎不全や血栓症(肺梗塞、心筋梗塞、脳梗塞など)、さらには感染症を合併するリスクが高まります。

「eGFR(推算糸球体濾過量)」の取り扱い

eGFR(腎臓の機能が今どれくらいあるかを示す値/腎臓がどれくらい老廃物を尿に排泄する能力があるか)」の記載がある場合、「血清クレアチニンの異常」に替えることができます。

中等度異常 10 未満 (ml/分/1.73 ㎡)
軽度異常10 以上 20 未満(ml/分/1.73 ㎡

参考資料として、 「eGFR(推算糸球体濾過量)」 の早見表を紹介致します。

「糖尿病性腎症」の病期分類について

g/dL」と「g/gCr」は、尿検査において異なる指標を示す単位です。これらは主に腎機能や尿中の蛋白質の評価に用いられます。
1,g/dLは、グラム毎デシリットルを意味し、通常は血液や尿中の物質濃度を示す際に使用されます。例えば、血清アルブミン濃度を測定する際に用いられることがあります。
 g/dLは、直接的な濃度を示すため、特定の物質(例:アルブミン)の絶対的な量を評価するのに適しています。
2,g/gCrは、尿中蛋白質の量を尿中クレアチニンの量で割った比率を示します。具体的には、尿中の蛋白質濃度(mg/dL)を尿中クレアチニン濃度(mg/dL)で割ることで計算されます[1]。この比率は、尿中の蛋白質排泄量をクレアチニン排泄量で補正することで、尿の濃縮や希釈の影響を除外し、より安定した指標を提供します。
 g/gCrは、尿中の蛋白質の排泄量を評価するために使用され、腎機能の評価において重要です。この指標は、尿の濃縮状態に左右されず、1日あたりの尿蛋白排泄量を推定する際に有用です。
これらの指標は、腎疾患の診断や管理において重要な役割を果たし、特に慢性腎臓病(CKD)やネフローゼ症候群の診断基準において使用されます。

「人工透析療法」の取り扱い

人工透析療法施行中の場合は、原則として次により取り扱われます。
ア 、人工透析療法施行中のものは2級と認定されます。
 なお、主要症状、人工透析療法施行中の検査成績、長期透析による合併症の有無とその程度、具体的な日常生活状況等によっては、さらに上位等級に認定されます。
イ 、障害の程度を認定する時期は、人工透析療法を初めて受けた日から起算して3月を経過した日(初診日から起算して1年6月を超える場合を除く。)とされています。

「腎臓移植」の取扱い

ア 、腎臓移植を受けたものに係る障害認定基準は、術後の症状、治療経過、検査成績及び予後等を十分に考慮して総合的に認定する。
イ 、障害年金を支給されている者が腎臓移植を受けた場合は、臓器が生着し、安定的に機能するまでの間を考慮して術後1年間従前の等級が適用されます。

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