「障害年金」の申請の際に必須書類である「診断書」。この診断書には主治医が、ご本人が抱える「心理的発達の障害」がどの分類なのかを明記している箇所があります。ご存知だったでしょうか。障害の特性を知る上でも、また「障害年金」を申請する際には貴重な情報となります障害年金の申請の際には必ず確認をするようにしましょう。

F84.0 自閉症

分類ID分類表記ICD10-1
120051464カナー症候 F84.0
220063175児童精神病 F84.0
320063433自閉症 F84.0
420064500小児自閉症 F84.0
520064511小児精神病 F84.0
620090409高機能自閉症 F84.0

「自閉症」と「 自閉症スペクトラム障害 」との違い

 似た言葉なので、単純に「自閉症」と「 自閉症スペクトラム障害 」。

「自閉症スペクトラム障害」の省略した言い方が「自閉症」で、「自閉症」と「自閉症スペクトラム障害」は同じものと考えてしまう方もいっらっしゃるかもしれません。

自閉症」「高機能自閉症」「アスペルガー症候群」を総称して、自閉スペクトラム症自閉症スペクトラム障害:ASD)と呼んでいます。

「自閉症」に対する一つの考察

自閉症研究の世界的な第一人者であるバロン・コーエンによると、人間の脳は次の二つのタイプがあるという。

(1)共感(empathy)を得意とするEタイプ

(2)システム(system)思考を得意とするSタイプ

自閉症は、極端なSタイプで、共感が極度に苦手。

自閉症の、ルールや同一性へのこだわりも、システムで考えることを好む。その為、同じ規則を求めようとする。

システム思考を好み、ものごとを一つのルールや法則で理解したがる傾向は、グレーゾーンから健常者に至るまでの、Sタイプの人たちの特徴でもある。

「自閉症」で「障害年金」の申請ポイント

障害年金を受給するには、一般的には下記(1)~(3)の条件を満たす必要があります。

障害年金を受給する為の条件

ここでは、「障害年金」を受給する為の条件について概要を説明します。

(1)「初診日」がいつなのか解ること

国民年金、厚生年金、共済年金へ加入していた期間中に、その障害の原因となった病気やケガを医師や歯科医師に診察してもらっていることが必要です。その診察を始めて受けた日を「初診日」言います。

この「初診日」がいつのなのか解ることが必要です。

(2)「保険料納付要件」を満たしていること

この保険料納付要件が満たされないと、一生この病気やケガを原因とする障害年金はもらえないので、大変重要な要件です。

初診日の前日に、その初診日のある月の、前々月までの期間の3分の2以上が、次のいずれかの条件に当てはまっている必要があります。

・保険料を納めた期間(会社員や公務員の配偶者だった期間も含む)
・保険料を免除されていた期間
・学生納付特例又は若年者納付猶予の対象期間

なお、被保険者でない20歳前の傷病により障害の状態になった方については、保険料納付要件は問われません。

(3)障害認定日以降に一定程度以上の障害状態にあること

障害年金を受けられるかどうかは、障害認定日以降障害認定基準以上の障害状態にあること。

「障害年金」を受給する為の条件について詳しくお知りになりたい方は、こちらをクリックして下さい。

「自閉症」の障害認定基準

「自閉症」は、あくまでも先天的な脳(の中枢神経)の障害であって、心の病気ではありませんが、「障害年金」を請求する際には、「診断書(精神の障害用)」を利用します。

「自閉症」に関する障害認定基準は下記の通りです。

(1)「自閉症」については、たとえ知能指数が高くても社会活動やコミュニケーション能力の障害により対人関係や意思疎通を円滑に行うことができないために日常生活に著しい制限を受けることを着目して認定を行う。また、発達障害とその他認定の対象となる精神疾患が併存しているときは、併合(加重)認定の取扱いは行わず、諸症状を総合的に判断して認定する。

(2)「自閉症」は、通常低年齢で発症する疾患であるが、知的障害が伴わない者が「自閉症」の症状により、初めて受診した日が20歳以降であった場合は、当該受診日を初診日とする

(3)各等級に相当すると認められるものを一部例示すると次のとおりである。

1級発達障害があり、社会性やコミュニケーション能力が欠如しており、かつ、著しく不適応な行動がみられるため、日常生活への適応が困難で常時援助を必要とするもの
2級発達障害があり、社会性やコミュニケーション能力が乏しく、かつ、不適応な行動がみられるため、日常生活への適応にあたって援助が必要なもの
3級発達障害があり、社会性やコミュニケーション能力が不十分で、かつ、社会行動に問題がみられるため、労働が著しく制限を受けるもの

発達障害とは、自閉症 スペクトラム障害 、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害学習障害注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものをいう。

(4)日常生活能力等の判定に当たっては、身体的機能及び精神的機能を考慮のうえ、社会的な適応性の程度によって判断するよう努める

(5)就労支援施設や小規模作業所などに参加する者に限らず、雇用契約により一般就労をしている者であっても、援助や配慮のもとで労働に従事している。したがって、労働に従事していることをもって、直ちに日常生活能力が向上したものと捉えず、現に労働に従事している者については、その療養状況を考慮するとともに、仕事の種類、内容、就労状況、仕事場で受けている援助の内容、他の従業員との意思疎通の状況等を十分確認したうえで日常生活能力を判断すること。引用元:発達障害の障害認定基準

日常生活能力及び就労の判断について

上記「障害認定基準」の通り、「日常生活への適応にあたって援助が必要なもの」が障害等級2級であり、「日常生活への適応が困難で常時援助を必要とするもの」が障害等級1級に該当します。

ですが、発達障害を抱える方は、「自力で行えない」というよりも、自力でやれても、その行った結果を見ると、普通に求められる程度には達しないことが非常に多く、その後始末に家族や周囲の人がフォローすることになります。その程度に応じて、援助がなければ出来ないのか、時に応じて援助があれば出来るのか等の判断がされます。

働いていると「障害年金」は受給できない?

「障害年金」は働いていても支給される場合があります。但し、「自閉症」の場合、就労の事実は認定のマイナス評価される傾向にあると思われます。

障害者雇用枠や一般就労で働いている場合

「障害認定基準」に下記のような記載があります。

『就労支援施設や小規模作業所などに参加する者に限らず、雇用契約により一般就労をしている者であっても、援助や配慮のもとで労働に従事している。したがって、労働に従事していることをもって、直ちに日常生活能力が向上したものと捉えず、現に労働に従事している者については、に、仕事のその療養状況を考慮するととも種類、内容、就労状況、仕事場で受けている援助の内容、他の従業員との意思疎通の状況等を十分確認したうえで日常生活能力を判断すること。 』

もし働いていたとしても、働いている状況について、この「障害認定基準」に基づいて、できるだけ詳しく伝えていくことが必要です。

「障害年金」申請のポイント

「自閉症」で「障害年金」を申請しようとする場合、下記の2つが申請ポイントとなります。

1,診断書の評価

(1)医療機関に作成して貰う診断書は、「障害年金」用の診断書になります。書式はこちら(一番下の方)です。

(2)この診断書は、「障害年金」自体の支給決定の有無のみならず、障害等級の決定に大きな影響があります。

(3)診断書のポイントは、日常生活能力の評価がより正しく評価を受けているかどうかです。

これは「正しく評価をしてくれて当たり前ですよ」と思われがちですが、当センターでお受けしている案件で「主治医の評価」と「ご本人及びご親族の評価」が一致しないことが多いことをお伝えさせて頂きます。

ご親族が同居されている場合は、ご親族の方から日常生活の状況をお伝えして頂く必要があるかもしれません。

2,病歴・就労状況等証明書の作成

(1)診断書は第三者である医療機関が作成しますが、「障害年金」を請求するご本人が、日常生活状況を訴える書類が 「病歴・就労状況等申立書」 です。ですので、この 「病歴・就労状況等申立書」 はご本人(又はご親族等)が作成することになります。

(2)この「病歴・就労状況等申立書」は、発症時から現在に至るまでの病歴などを記載する書類となっています。

(3) 「病歴・就労状況等申立書」 の作成ポイントは、主観的に記載しないことです。

例えば、「~辛かった」ことを表現したい場合、「どう辛かった」のか、それが「発達障害」の症状にどう関係があるのか等を第三者に理解できるように具体的に記載して下さい。

病歴が長い方に関しては、記憶が曖昧になっていることが多いので、ご親族等と確認しながら作成すると良いと思います。

(4)ご自身の行動の特徴を客観的に把握されている方もいらっしゃいますが、そのような方達ばかりではないので、ご親族と同居されていない場合でもご親族等の助力を得て作成されることをお勧め致します。

まとめ

以上が、簡単ですが「自閉症」で「障害年金」を申請するポイントとなります。もしご不明な点等がありましたらご遠慮なくお問合せ下さい。

最後読んで頂きまして大変にありがとうございました。

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