大脳新皮質は、知覚や運動制御、未来の予測、計算、推理などの機能を司っています。つまり、我々の知性の源泉ともいえます。
しかし、この大脳新皮質が損傷を受けると、視覚が失われたり、高次脳機能障害が起こったりすることがあります。では、大脳新皮質がどのような構造と機能を持つのか、障害を負うとどうなるのか詳しく見ていきましょう。
Contents
大脳新皮質の機能(働き)
1,大脳の部位のうち、表面を占める皮質構造のうち進化的に新しい部分。
ものを知覚したり、運動を制御したり、未来の予想、論理的思考、言語、計算、推理を司っている器官です。
その為、脳梗塞等の脳疾患にかかると、後遺症として肢体障害や言語障害、高次脳機能障害、眼の障害等を引きおこる可能性があります。
2,人類に至る三大進化の一つ。※1,目をもった。2,胎盤をもった。3,大脳新皮質をもった。
「脳の進化」は、基本構造を変化しないで、機能を追加することでなされました。因みに、「大脳新皮質」のシワの多さが、人間と他の動物の違いのようです。オラウータンのは、人間のと似ているそうです。
また、人間同士を比較してみると、シワのパターンはほとんど同じで、シワの多さは頭の良さには影響がないそうです。
3,脳の細胞には2種類があり、繋がっている「相手の力を強める細胞( 興奮性神経細胞 )」と「相手の力を抑える細胞( 抑制性神経細胞 )」です。
この力関係のバランスが崩れると「統合失調症」「てんかん」等になるとも指摘されています。
大脳新皮質の構造
大脳新皮質は、非常に薄い組織であり、厚さは1mm〜3mm程度です。
この組織は、約2500cm2もの面積を持ち、新聞紙一枚分の大きさに相当します。なかなかの広さですよね!
頭蓋骨の中にしわしわに折りたたまれて収納されています。折りたたまれた時に表面に出てくる部分は「脳回」と呼ばれ、奥に入り込んで見えない部分は「脳溝」と呼ばれています。
特に目立つ脳溝には名前がついており、中でも「中心溝」と「シルヴィウス溝」は重要な部分です。
大脳新皮質は、脳溝による区分けとそれぞれの機能に基づいて、4つの領域に分かれています。
これらの領域は「大脳葉」と呼ばれ、前頭葉、頭頂葉、側頭葉、後頭葉の4つがあります。
(1)前頭葉は物事の判断や計画に関与します。
(2)頭頂葉は運動と皮膚感覚を制御します。
(3)側頭葉は見たり聞いたりしたものを認識します。
(4)後頭葉は視覚の処理を担当しています。
大脳新皮質の障害について
大脳新皮質は、知覚や運動制御、未来の予測、計算、推理など、知性を司る重要な器官です。しかし、この器官が損傷を受けると、さまざまな障害が起こることがあります。
1,運動制御と協調
大脳新皮質は、私たちの運動を制御し、協調させる役割も担っています。この部分が損傷を受けると、運動の制御や協調性に問題が生じる可能性があります。
(1)脳卒中
脳血管の問題により起こる脳卒中は、大脳新皮質を含む脳領域に影響を与え、運動障害や協調運動の問題を引き起こす可能性があります。
(2)外傷性脳損傷(TBI)
頭部への直接的な損傷により、大脳新皮質が影響を受けることがあり、運動制御の障害や協調運動の問題を引き起こす可能性があります。
(3)多発性硬化症(MS)
神経系の慢性疾患で、大脳新皮質を含む脳の領域に影響を及ぼすことがあります。これにより、運動調節の問題や協調運動の障害が生じることがあります。
(4)パーキンソン病
運動制御に影響を及ぼす神経変性疾患で、大脳基底核の障害が主でありますが、大脳新皮質の機能にも影響を及ぼす可能性があります。
(5)ALS(筋萎縮性側索硬化症)
運動ニューロンの変性により、運動制御や協調運動に問題が生じる神経変性疾患です。
これらの疾患は、大脳新皮質の損傷により、運動の制御や協調性に障害を引き起こす可能性があります。
2,未来の予測、計算、推理
大脳新皮質は、未来の予測や計算、推理などの高度な知的な処理も行います。この部分が損傷を受けると、これらの能力に支障が出ることがあります。
(1)脳梗塞や脳出血などの脳卒中
脳卒中は脳の血流が妨げられることで起こり、大脳新皮質を含む脳の領域が影響を受けることがあります。これにより、計算能力や推理能力などの認知機能に影響を及ぼす可能性があります。
(2)外傷性脳損傷(TBI)
頭部への損傷により、大脳新皮質が影響を受けることがあります。これにより、記憶障害、判断力の低下、集中力の欠如などの症状が現れることがあります。
(3)前頭葉変性症(FTD)
この神経変性疾患は、特に大脳新皮質の前頭葉に影響を及ぼし、行動、性格、言語能力に変化をもたらします。
(4)アルツハイマー病
認知症の一種で、記憶、思考、言語、判断力などの認知機能に影響を与えます。初期段階では大脳新皮質の一部に影響を及ぼすことがあります。
これらの疾患は、大脳新皮質の損傷によって特徴付けられることが多く、未来の予測、計算、推理などの高度な認知機能に障害を引き起こす可能性があります。
3,言語の理解と表現
大脳新皮質は、言語の理解と表現にも関与しています。この部分が損傷を受けると、言語に関する障害が起こる可能性があります。 大脳新皮質の障害 視覚失認とその種類 大脳新皮質の視覚処理の部分が損傷を受けると、視覚失認と呼ばれる障害が生じます。
(1)失語症
大脳新皮質の特定の部分が損傷を受けると、言語の理解や表現に問題が生じる。ブローカ失語症(発話困難)やウェルニッケ失語症(言語理解障害)などの種類があります。
(2)視覚失認
大脳新皮質の視覚処理の部分が損傷を受けると、視覚情報の解釈に問題が生じる。例えば、顔貌失認(顔を識別する能力の喪失)や物体失認(物体の識別が困難になる)などがあります。
(3)注意欠陥障害
大脳新皮質の損傷は、注意力の維持や集中力にも影響を及ぼす可能性があります。
(4)実行機能障害
計画立案や意思決定などの実行機能に障害をきたすことがあります。これは、特に大脳新皮質の前頭葉部分の損傷に関連しています。
これらの障害や疾患は、大脳新皮質の特定の部位の損傷によって引き起こされることが多く、その影響は損傷の場所や程度によって異なります。
4,高次脳機能障害
大脳新皮質の損傷によって、高次の脳機能に障害が生じることもあります。これによって、物事の判断や計画、意思決定などに影響が出るかもしれません。
5,分離脳
大脳新皮質の特定の領域が損傷を受けることにより、その領域に関連する機能が切り離される、いわゆる分離脳の状態が生じることがあります。
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