年末調整や確定申告の時期になるとお問合せがある「一般障害者」と「特別障害者」について解説したと思います。この「一般障害者」と「特別障害者」という言葉自体が普段使われることがないので、違いも分からない人がほとんではないでしょうか。
また、「障害年金」との関係についても言及したいと思います。
まず「一般障害者」や「特別障害者」が該当する人は、年末調整や確定申告にどのような影響があるのでしょうか。それはこれらに該当する人は、所得控除として「障害者控除」を利用することができます。
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税法上の「障害者控除」をご存知ですか?
「障害者控除」とは、障害を抱えていらっしゃる方は仕事をするにしても制限があったり等負担がかかっています。その負担軽減の一環で「障害者控除」があります。
「障害者控除」を利用できる人は?
1)成年後見を受けている方
2)知的障害者や精神障害者、身体障害者
3)戦傷病者
1)2)3)の方等で障害者と判定され手帳の交付を受けている方、そしてこれに準ずる状態であると認定された方
「障害者控除」を利用できる人を見ると、どこにも「障害年金〇〇級」とは記載がありません。つまり、「障害年金」を受給している人でも「障害者手帳」等を所持していないと「障害者控除」を利用することができません。
「障害者控除」には種類がある?
「一般障害者」と「特別障害者」では受けれる「障害者控除」の額が異なります。
「一般障害者」と「特別障害者」の違いは?
1,「一般障害者」とは
「一般障害者」とは、下記の者を言います。「障害者控除額」は27万円
1)身体障害者3~6級
2)精神障害者保健福祉手帳2~3級
3)療育(愛護)手帳3~4度(B・C)
4)戦傷者手帳第4~第6項症該当者
2,「特別障害者」とは
「特別障害者」とは、下記の者を言います。「障害者控除額」は40万円
1)身体障害者1級・2級、精神障害者保健福祉手帳1級
2)療育(愛護)手帳1~2度(A)
3)戦傷者手帳第1~第3項症該当となる方
4)原爆症認定を受けている方
5)成年被後見人の方
6)6か月以上寝たきりで介護が必要な方
同居の「特別障害者」がいる場合は?
扶養している者が、「同居の特別障害者」である場合は、「同居特別障害者」という扱いになり、控除額が75万円となる。
<障害者控除の控除額一覧表>
障害者控除の区分 | 控 除 額 |
障 害 者 | 270,000円 |
特 別 障 害 者 | 400,000円 |
同居特別障害者 | 750,000円 |
所得税確定申告書への記載方法
給与所得者の扶養控除等(異動)申告書の記載方法
年末調整の際の必要書類である 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書 には、ご本人や扶養親族に障害者がいらっしゃる場合、記載する箇所があります。
記載方法が良く分からないとご相談をお受けすることがあるので、扶養親族に「一般の障害者」が一人いる例として、記載方法を例示しますのでご参考にして下さい。
「障害者手帳等」を所持しなくても、「障害者控除」を受けられる?
「障害者手帳等」を所持している場合は、「障害者控除」を受けれることは理解しやすいですが、「障害者手帳」等を所持していなくても、「障害者控除」を受けれる場合があるので注意が必要です。
下記にその件について国税庁HP記事を掲載します。ご参考にして下さい。
概要
障害者控除の対象とされる障害者は、所得税法施行令第10条に規定されている人とされていますが、身体障害者手帳または戦傷病者手帳の交付を受けていない人であっても、次に掲げる要件のいずれにも該当する場合には、障害者控除の適用を受けることができます。
(1)その年分の所得税法第112条第1項((予定納税額の減額の承認の申請手続))に規定する申請書、確定申告書、給与所得者の扶養控除等申告書、退職所得の受給に関する申告書または公的年金等の受給者の扶養親族等申告書を提出する時において、これらの手帳の交付を申請中であること、またはこれらの手帳の交付を受けるための医師の診断書を有していること
(2)その年の12月31日その他障害者であるかどうかを判定すべき時の現況において、明らかにこれらの手帳に記載され、またはその交付を受けられる程度の障害があると認められる人であること
根拠法令等 所法2、所令10、所基通2-38
引用元:No.1186 身体障害者手帳等の交付を申請中である場合の障害者控除の適用について
また、良くあるご相談の1つでもある65歳になったら、「老齢年金」と「障害年金」とでは、どちらを選択したら良いですか、という場合に、実際に手取り額を計算をしますが、今回説明した「障害者控除」を考慮して計算する必要があるので、忘れないようにして下さい。
とは、「障害年金」は、「老齢年金」とは異なり非課税の収入です。年末調整や確定申告の必要すらありません。そのような意味もあって、対象者には「障害年金」の受給権者の記載がないものと考えます。
※ 勿論、「障害年金」を受給しながら勤労所得等がある方もいらっしゃいますので、その収入の範囲で年末調整や確定申告が必要となりますのでご注意下さい。
障害者手帳を所持すると自動的に「障害年金」受給できる?
札幌障害年金相談センターに寄せられるご相談の中には、「障害者手帳を所持しているけど、障害年金を受給できないのでしょうか。」というご相談があります。
結論から言うと「障害者手帳」を所持しているだけでは自動で「障害年金」は受給できません。
「障害年金」を受給されたい場合は、「障害年金」に関する年金請求書一式を年金事務所等に提出する必要があります。
尚、年金請求書は、利用できる障害年金制度によって異なりますのでご注意ください。
障害年金を受給すると確定申告が複雑になる?
確定申告をする際、障害者控除を調べたりして、それでなくても年に1回の手続きなのに確定申告自体がそもそも面倒で仕方ないはずです。そこに新たに「障害年金」を受給したら、その分も確定申告に盛り込まないといけないと考えると、書類作成が苦手の方にしていると身震い以外の表現はないのではないでしょうか。
ですが、ご安心ください!
「障害年金」は、全額非課税ですので、確定申告に盛り込む必要が一切ありませんので、「障害年金」を受給したとしても、確定申告は複雑には一切なりません。
障害年金を受給するデメリットは?
世間では「うまい儲け話には裏がある」とは言いますが、この障害年金制度は、国が運命をしているので安心して利用することができます。ではメリットだけなのか?障害年金を受給するデメリットはないのか?という疑問が出て来るかと思いますので、この件について言及したいと思います。障害年金の手続きをするデメリットは?
障害年金受給のデメリット1:老齢年金が減額になる?
障害年金を受給すると、国民年金の保険料が法定免除となります。
そうなると当然、本来納めるべき保険料を免除され、保険料を払わないのですからその分、老齢基礎年金が減少します。但し、法定免除期間の保険料を納めるか、免除を受けるかを選択することができます。また、法定免除を受けたとしても後日追納することも可能です。
法定免除を受ける場合は、自動的に保険料が免除になる訳ではなく、別途、市(区)役所・町村役場の国民年金担当窓口に届出が必要です。
障害年金受給のデメリット2:生活保護との調整
現在、「生活保護」を受けている方の場合、「 障害年金」と「生活保護」が調整対象となります。
また、過去に「生活保護」受けていた方であったとしても、「障害年金」を遡って請求(認定日請求)が認められた場合、「生活保護を受けていた期間」と「障害年金を受給することになった期間」が、重なっている期間分は支給調整となりますので注意が必要です。
障害年金受給のデメリット3:傷病手当金との調整
これは上記障害年金受給のデメリット2:生活保護との調整と同様で支給調整(但し、調整の仕方は異なる)されますので、支給調整される方は注意が必要です。
障害年金受給のデメリット4:死亡一時金、寡婦年金の不支給
(1)「死亡一時金」は、国民年金に加入している者が、年金を受給しないで死亡した場合、そのご家族に支給されます。ご本人が「障害年金」を受給していたらご家族に「死亡一時金」は支給されないことになります。
(2)「寡婦年金」は、保険料納付期間が10年以上ある国民年金の夫が死亡した場合、10年以上継続して婚姻関係で、生計を維持されていた妻に対して60歳から65歳まで支給されるものです。但し、夫が会社員だった場合は寡婦年金の対象外なので検討する必要はありません。
障害年金受給のデメリット5:社会保険の被扶養者から外れる
社会保険の被扶養者になっている方が、「障害年金」を受給するようになった場合、障害年金の金額が年額180万円を超える場合、社会保険の被扶養者から外れることになります。
社会保険の被扶養者から外れたとしても、「障害年金」自体が非課税なので、国民年金保険料の全額が法定免除を受けられ、国民健康保険料は均等割りしかかかりません。年間で数千円程度でしょう。「障害年金」の受給額から考えるとそれ程大きな負担ではありません。
以上障害年金受給のデメリットを5つ挙げましたが、「障害年金」を受給するメリットに比べると、大きなデメリットではないのではないでしょうか。 障害等級3級以上の障害者手帳を所持されていて、まだ「障害年金」の手続きをされていない方は「障害年金」の申請をご検討してみてはいかがでしょうか。
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