障害年金の受給手続きをするに当たり、「発達障害」と「知的障害」の違いについて解説します。ご興味がある方は是非ご覧下さい。

まず「発達障害」と「知的障害」の、そもそもの違いを把握した上で、その違いが障害年金の受給手続きをする上でどのような違いとなるか、という流れで解説を進めていきます。

そもそも「発達障害 」 と 「知的障害」の違い

ご興味をもって調べることをしない限り、一般的には区別して説明できる人は少ないかもしれません。

発達障害とは

【 発達障害 】は、生まれつき脳の発達に偏りがある為、日常生活に支障が出ている状態のこと。大きく分けると、広汎性発達障害、学習障害、ADHDの3つがあります。

知的障害とは

【知的障害】とは、発達期までの知的発達の遅れで、日常生活を送る上で適用が困難になっている状態のことです。医学的には次の3つの条件があります。①知的機能の遅滞があるIQ70以下、②生活上の適応機能に制限がある。③概ね18歳未満で現われる。

【知的障害】 は、「精神遅滞」と同じ意味で使われています。

知的障害と発達障害の関係

知的障害には、国際的に統一された定義や日本の法律における明確な定義がないため、さまざまな定義が存在しています。

医学的な分類では、精神疾患の国際的な診断マニュアルであるアメリカ精神医学会の『DSM-5』(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第5版)において、知的障害は「知的能力障害(知的発達症/知的発達障害)」と呼ばれており、「神経発達症群/神経発達障害群」の中に位置づけられています。

つまり、知的障害は「発達障害」の枠組みの中に含まれるということになります。

また、知的障害は「発達障害」に含まれるほかの疾患である「ASD(自閉スペクトラム症)」や「ADHD(注意欠如・多動性障害)」、「学習障害(LD)/限局性学習症(SLD)」や「発達性協調運動障害」と併存する場合もあります。

引用元:知的障害と発達障害の違いは?それぞれの種類や特徴もわかりやすく解説します

WISC-IV知能検査の内容

「WISC-IV (ウィスク・フォー) 知能検査」は、15の検査「10種類の基本下位検査」、「5種類の補助下位検査(必要があれば行う検査)」で構成されています。

全検査IQ(FSIQ)

全体的な認知能力を表す項目です。補助検査を除いた10種類の基本下位検査の合計から算出されます。

4つの指標得点M

1,言語理解指標(VCI)

(1)言語理解指標(VCI) とは、言語による理解力・推理力・思考力について指標です。

(2)言語理解指標(VCI)の検査には、次の5種類があります。

 ・基本検査

  ①類似

  ②単語

  ③理解

 ・補助検査

  ④知識 

  ⑤語の推理

言語理解指標(VCI)高い場合は、言語的推論能力(資料を分析・評価し、そこから得られる情報を合成したり、文章の構成要素間の関係を分析したりする能力)が高く、色んな言葉を知っている、話し相手の言葉の意味や内容を理解し、効果的に表現する能力があることを示唆しています。

逆に、低い場合は、話し相手の言葉その意味、話の内容を理解し、話しを通して表現をすることが困難であることを示し、学校成績や社会的交流に影響する可能性がある。

2,知覚推理指標(PRI)

知覚推理指標(PRI) とは、視覚的な情報に触れて推理する力や、視覚的情報に応じて身体を動かす力についての指標です。こと視覚的な情報は動的なケースもあり得るので、そういう意味では、新しい情報に対する対応力、そして解決能力に及ぶものと考えられています。

知覚的推理指標(PRI)で検査では、実際に目で見た情報を理解力を中心とした検査です。検査は回答を実際に手を動かして行ってもらいます。視覚からの情報を適切に処理し、合わせて手を動かすことで確認するためです。

知覚推理指標(PRI)  が高い場合は、図面を描く、図面を理解す、地図を読むのが得意なことを示唆しています。

3,ワーキングメモリー指標(WMI)

ワーキングメモリー指標(WMI) とは、一時的な情報を用いながら処理する能力についての指標です。読み書き、算数などの学習能力や、集中力に大きく影響があることが指摘される。

4,処理速度指標(PSI)

処理速度指標(PSI) とは、視覚情報に対応できるスピードに関する指標です。どうしてもマイペースになる傾向にある場合はこの指標得点が低くなります。

私達は、IQと言えば、「IQ104」などのように、「IQ〇〇」という数値の1つだけしかないと思い込んでいましたが、実はそうではないんですよね。

知的障害?それとも発達障害?

知的障害なのか、それとも発達障害かどうかを判断の仕方としては、

(1)全体的な指数(全検査IQ)が、平均と比較をし、平均より低いと「知的障害」があるかどうかが根拠となります。

(2)上記4つの群指数に偏りが強いと「発達障害」が疑われる根拠となります。

 とはいえ、4つの群指数の偏りがあるからといって、それだけでは「発達障害」とは診断されるものではなく、「発達障害」かどうかの判断は、幼い頃から現在に至る症状や生活での支障の大きさによって最終的に判断されるようです。

 このことは、発達検査では大きな偏りがみられるけど、発達障害と診断されないケースも可能性としてはあり、  このケースもグレーゾーンとされています。 

 もっと言うと、発達障害と診断されるような症状や生活ぶりを示していても、発達検査では、4つの群指数に偏りがないケースもあり得ます。

「障害年金」の受給手続きで重要なことは

障害年金の手続きにおいては、「知的障害」の場合は国民年金の障害基礎年金しか利用できませんが、「発達障害」については、国民年金の障害基礎年金を利用するケースもありますが、場合によっては厚生年金保険の障害厚生年金を利用できる可能性があることではないでしょうか。

何故、そのような扱い方が異なるのかをみていきましょう。

何故「発達障害」と「知的障害」の障害年金の手続き上扱われ方の違う?

「障害年金」を受給要件をご確認して頂くと、「初診日」がとても重要であることはご理解して頂けるかと思います。※「障害年金」を受給要件については、こちらをご覧ください。

この「初診日」について扱い方が「発達障害」と「知的障害」では異なる為、上記のような違いとなります。

通常の「初診日」の考え方としては、何かしらの病気が発症等して初めて病院に通院した日を「初診日」と言います。※「初診日」について詳しくお知りになりたい方は、こちらをご覧ください。

「発達障害」については、「初診日」については、原則通りの考え方ですが、「知的障害」の場合は、生まれつきという考えとなるので、いくら成人してから病院に初めて通院したとしても、その日が「初診日」と扱われず、「誕生日」を「初診日」として取り扱われます。

その為、「知的障害」で「障害年金」を手続きをする際は、必ず国民年金の障害基礎年金を利用することになります。

「発達障害」「知的障害」で障害年金の手続きする際の重要なポイントは?

障害年金を請求しようとお考え方が、「発達障害」又は「知的障害」、又は「発達障害」「知的障害」の双方の症状を抱えている場合、手続きを進める上でとても重要なことがあります。

それは、日常生活状況の把握です。

もっと言うと、日常生活状況を第三者に理解して貰えるように文章化することです。

何故、第三者に?

そして、文章化しないといけないの?

(1)第三者に理解して貰う理由

二つの状況が考えられます。

①障害年金用の診断書作成時に主治医に知って貰う必要があります。

 障害の傾向性までは解っていらっしゃっても、普段の日常生活状況については聞かないと解らないことが多いはずです。

②障害年金の年金請求書提出後の審査過程において、嘱託の医師が障害の程度を判断する際に知って欲しい、理解して欲しいからです。しっかり理解して欲しいことを漏れなく、悔いが残らないように障害年金の書類を整備して手続をしたいものです。

(2)文章化する理由

上記(1)①②をご覧頂けると、共に文章化が出来ていると良いことはご理解して頂けると思います。

特に障害年金の審査過程においては書面でしか審査されませんので尚更です。

日常生活状況の把握 においての違いはあるのか

日常生活状況の把握において、「発達障害」と「知的障害」の違いがあるのでしょうか。

ここに関しては特にありません。

日常生活状況 で把握する項目は、「発達障害」と「知的障害」では同じ項目となります。

把握すべき日常生活状況の項目

(1)適切な食事

(2)身辺の清潔保持

(3)金銭管理と買い物

(4)通院と服薬

(5)他人との意思伝達及び対人関係

(6)身辺の安全保持及び危機対応

(7)社会性

上記7個の項目を中心に聞取りをして「日常生活状況」を把握することになります。

また、この7個の項目は、障害年金用の診断書の項目でもあります。

精神の障害用の診断書における違い

障害年金の受給手続きをする際に必要な書類の1つである主治医に作成して貰う「診断書」。

先程述べた通り、日常生活状況の把握を診断書に評価していくことになりますが、項目が同じであれば「診断書」上では「発達障害」と「知的障害」との違いはないように思いがちですが、実際には異なる扱い方となります。

また、「発達障害」と「知的障害」の両方を抱えている場合も区別する必要があります。

まとめ

「発達障害」と「知的障害」は、障害年金の受給手続きにおいては大きな違いがありませんが、障害年金の「診断書」においては区別される、ことになります。

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